いつもより ページ34
「――騒がしい人たちでしたねぇ」
もう遠くなった三つの背中の方を見つめつつ呟いた私。銀さんはというと「うるせーことこの上ねーな」なんて。呼び寄せたくせに酷い言いようである。
あまりにも強烈だった彼らに少しぼうっとしながら先程までのことを思い出せば、つい数分前の出来事が浮かんできて。
「……銀さん」
「あ?」
「……ありがとうございました?」
一応、お礼だけ言っておいた。数分前の出来事というのは特殊サドさんのアレのことだ。どうにも私は危機的状況であったらしいしお礼くらいは言っておかなければならない。私は常識人なのである。
まさかこの人にお礼を言う日が来るなんて、と少しばかりショックを受けていると。
「……別に、他意はねーよ。…こっちも依頼人とられちゃ面白くねェってだけで」
「面白くない?」
「あと俺アイツ等嫌いだし」
ナチュラルに逸らされた話題に少々疑問符が浮かばなかったわけではないけれど、まぁ気にすることではないかとそのまま流した。
嫌いだし、と頑ななそれに思わず笑いがこぼれる。
「子供みたいですね」
「誰がガキだぶっ飛ばすぞ」
「だってムキになってるじゃないですか」
これはいつも思うけど、銀さんはなんだか子供のようだ。ジャンプを読みふけったり寝たりあっけらかんととんでもないこと言い放ったり。その遠慮のない行いがたまに面白くなったりすることがないわけでもない。
ケラケラと笑う私を一瞥し「そうかよ」とかなんとか言った彼は「……んで、」なんて話題を転換し。
「そろそろ帰ェるか、団子食っちまったし」
――と。
……それに頷きそうになって寸のところで私は自分に自制をかけた。だめだそれは!
「私まだ銀さんの美人の基準わかってないです!」
そう、そもそもここへ来た本来の目的はそれだったはずだ。追求の姿勢を見せる私を心底面倒くさそうに見遣った彼は「あーハイハイ、アレアレ」とかなんとか発し、
「内面?」
「いや元も子もない!」
私は外見について頑張ろうとしているってのに、なんということだそれは!しかしその人は「もう言ったからいいだろ」だなんて言って腰を上げていて。
「――あ、ちょっ、銀さん!!?」
なんだかいつもより視線を合わせてくれないような気がする彼を、私は慌てて追いかけたのだった。
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高杉紗夜香(プロフ) - よく銀さんは胸が問題と言っていますが、中村さん的にはどれくらいが小さくてどれくらいが大きいんですか? (2018年1月17日 14時) (レス) id: 47ea433c10 (このIDを非表示/違反報告)
ピピ - 中村さんの作品、いつも読ませていただいてます!ヒロインと銀さんのやり取りが面白くて大好きです!これからも頑張ってください! (2016年10月10日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
中村(平日低浮上)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!コマンド、笑ってくださって嬉しいです笑 じょは…ご想像におまかせします! なんとか一巻か二巻におさまるかな、という感じです。よろしくしていただけたらと思います…!! (2016年10月9日 18時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - じょ、とは一体……上玉?上等?← (2016年10月9日 8時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
まさか(プロフ) - コマンドでお茶をふく…リアルに吹きました五年ぶりくらいに…笑 応援してます! (2016年10月7日 20時) (レス) id: fc0d9ef477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年10月1日 23時