間違え ページ39
「ふざけてんの?殺されたいの?ちょっとあの天パ殺ってくる」
「落ち着け!!」
落ち着けってこんなもん落ち着いてられるか!私を止める土方十四郎だって青筋がこれでもかというほど浮かんでいるのだ。お前が落ち着け。
それより万事屋の旦那からラブホの割引券差し入れってどういうこと?頭かち割ってやりたいというか本気で殺したいというか死ね!
殺意の衝動を必死に耐えていれば「いっけね」と。
「間違えやした、これさっき拾ったやつでした」
「何拾ってんだテメェは!!捨ててこい今すぐ!」
「落し物かもしれねーでしょう。職務を完うしたまででさァ」
「マジで切腹をしろ」
「物騒ですねィ」
間違えただなんだとぬかすクソガキだけれども、その顔を見る限り確信犯だろう。私と土方十四郎の反応を見て楽しんでいたということだろう。殺す。
私の殺意を知ってか知らずか「これでしたこれ」なんてまた違う紙切れを差し出したクソガキ。
「今度は間違いないでしょうね」
「ありやせんよ、流石に。なんかの礼だとか言ってやした」
…これでまたそっち系の何かだったら私は万事屋に火をつける。そう決意しつつ紙切れを覗き込めば。
「――縁日、引換券?」
――そこで踊っている文字に思わず間抜けな声が漏れる。…縁日。まぁこの時期珍しくはないけど。
「…どうしてこんなもん?」
「……礼っつーとアレだろ。…この間の」
「あーなるほど」
脳裏に蘇るのはカップルのふりをしたあの一件であった。……にしても、礼、なんて。
私の知る限り万事屋の旦那はケチだ。ケチといっても並のケチではない。ケチの中のケチだ。――それが、ものを無償で人に渡すなんて。
「クサイですね」
本当にコレいわくつきじゃないんですか、とクソガキを睨む。そいつはさも心外だとでもいうかのように「当たり前でさァ」と。
「いくら旦那といえど何かしてやったんなら礼くらいするんじゃねーですかィ」
「………、」
そんなもの、なんだろうか。怪しみながら土方十四郎を見上げればこちらもなんとも微妙な顔をしていた。…が、一応貰っとくがよ、なんてクソガキからそれを受け取っている。
「…え、行くんですかそれ」
「行くにしろ行かねェにしろとりあえず受け取っただけだ」
「なるほど」
――そうして、小声でそんなやりとりを繰り広げる私たちは。
「毎度あり」
にやりと口を歪めたクソガキに、気づくことはなかったのだった。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時