悪いか ページ34
「……お前、」
それだけ言って固まったそいつ。逆に私はもう怖いものなしである。――そうだよ悪いか、惚れてて。何か悪いことでもあるのか。いや、ない。
「ほんっとうクソむかつくしイケメンだしクソヤロウだしどこがいいんだか全くもって分かりたくなかったけど、……どうにもあんたにほだされた」
「……、」
「名前呼ばれたら平静保ってられないくらいには、あんたと他の女がくっついてたら暫く引きずるくらいには、…惚れてた。不本意ですけど」
それで、だ。
……それで肝心なことは。私がこの目の前のイケメンに聞きたいことは。
「―――――あんたはどうなの」
嫌われていないという自負はある。ただのキャバ嬢以上には思われている自負もある。
一体私は土方十四郎の何なんだ、とそんな視線を向けてみれば、そいつは静かに私から目を背けた。
「…俺は」
いつもの鋭い眼光はどこへやら。…どこか揺らいでいるようにも見えるその双眸は、どうしたってこちらを向かない。
そして。
「――俺は、幸せに出来もしねェのにそういう女作るほどアホじゃねェよ」
私の目を見ないまま続けられたそれに。
苦虫を噛んだようなその表情に。
(…あぁ、なるほど。)
「野郎に惚れるなら精々覚悟してから惚れるこった」
私はいつかの、クソガキの言葉の意味を理解した。…うん、なんだ。――これは、なんという。
「―――面倒臭い男」
こぼれた言葉に土方十四郎の睨みが向けられた。漸くこっち見やがったなてめえ。
「人の話は目を見て聞けって言われませんでした?礼儀もなってねえのかこれだからイケメンは」
「…何の話だ。……別に目なんざ、」
「――そもそも!」
そもそも、である。根本的な問題だ。
キ、と土方十四郎を睨みつけて。
「私が聞きたいのはあんたが私に惚れてるかどうかってことだけで、幸せに出来るできないは聞いてないしクソほどどうでもいい」
「……んなこと言ったってお前、」
まだ何やら続けようとするそいつに、私は大きなため息を吐いた。悪足掻きはやめればいいものを、バカなのかこいつは。バカなんだなこいつは。
「―――――惚れさせたのはてめえだろクソヤロウ、勝手に幸せになってやるから私に惚れてんの白状しろ!」
「…な、」
今の土方十四郎の顔を言葉で表すなら“素っ頓狂”だ。どれだけ似合わない顔してんだか。爆笑ものである。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時