恥を忍んで ページ18
――な、
(……なんて呼び合っているか？)
そんなの私は奴を『土方十四郎』と呼んでいるし奴は私を…固有名詞で呼んでいるとしたら『キャバ嬢』『猫かぶり』くらいか。――んなもん言える訳ねえだろ！
頬をヒクヒクさせながら店員を見つめる。
「…ちなみに、他のカップルの方とかってどんな風に呼び合ってらっしゃるんですか？」
「他の方はですねえ…“たっくん”“ゆうちゃん”とか“さんちゃん”“みかちゃん”とか…呼び捨ての方もいらっしゃいますよ」
「…………苗字とかは」
「え、苗字？」
「いやなんでもないですぅー！気にしないでくださいー！」
虫唾の走る呼び名をつらつらと並べられ、これならどうかと放った言葉は『何言ってるの』とばかりにドン引きしながら聞き返された。
……そうか、こんなところに来るようなのには苗字で呼び合うようなプラトニックなお付き合いをしている男女はいないのか。
(――となると、どうする……。)
たっくんゆうちゃん系？なに？土方十四郎はとっくん？徳利か。特訓かお前。さんちゃんみかちゃん系で考えてもトシくんって何だそれは。四歳児か。……苗字で呼んだら追い出されかねないし。
…もう、消去法だった。
「――――十四郎」
恥を忍んで言った、私。びくりと隣でそいつが動揺したのがわかる。……しゃーないだろ、どうしようもなかったんだってば。
なにが面白いのか目をキラキラさせる店員は「呼び捨てですか！彼氏さんはなんて？」などなど。…後半のみのそれを始めて口にした私には、土方十四郎にざまあみろと思うほどの余裕はない。
しかし。
「…――A」
「……っ、」
――多分仕方なく発されたその名が、店員にではなく私へ向けられていることが。
土方十四郎が顔をこちらへ向けてそれを発したことが、わかって。そうして更に余裕がなくなって――――この間見ないふりをしたものに、ぶち当たりそうになる。
驚愕とともに上げた視線がそいつと絡み合って、心臓がはねそうに、なる。
(……あぁ、ダメだ。これ以上。)
この目を見ていたら、いけない。気づいてしまう、なにかに。
土方十四郎の目から視線をそらして、店員を視界におさめた。ニコニコする彼女に「もういいですか？」と尋ねれば「はい！」と。
「お好きなところへ、お座りください！」
――――そうして私たちは無言を守ったまま、オープンカフェとやらに足を踏み入れたのだった。
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蘓澳 - さすが中村さん！って感じで楽しく読ませて頂きました！ (2016年10月11日 17時) (
レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村＠平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀｀)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます！夢主ちゃんホントにいい性格ですよね！見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです！とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：中村
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時：2016年8月25日 23時
