閉鎖的空間 ページ10
―――――
――無機質な廊下を歩いて、歩いて、歩いて。・・・そのまま十数分経ったころ。
「――――ここッスね」
来島さんが、とある扉の前で立ち止まった。
・・・心なしか――・・というより、実際窓がなくなって他より暗くなっているそこは厳重に鍵がかけられていて。
「・・あの、来島さん」
「・・・? 何っスか?」
「鍵は・・?」
聞けば「勿論持ってるッス」と。・・よかった。
幾重にもかけられたそれらを、ガチャリガチャリと一つ一つ外していき。
(・・・――ここに。)
――――鉄製の重そうな扉がそのありのままの姿を晒した。
(・・ここに、“彼女”は。)
――その、裏切り者は。
「・・・・・行きましょうか、来島さん」
そう来島さんに声をかけて、ドアノブを回す。・・ぎぃと響いた音は重苦しかった。
・・・・そして。
(――――暗い。)
・・まずその部屋を見回して私が抱いたのはそんな感想。各部屋に申し訳程度に備え付けられている窓すらもないそこには小さなランプが頼りなく点っているのみであり。
・・・・・・そんな閉鎖的空間に思い起こしたのは、あのコンクリートの部屋。私が連れされた時のあの部屋。・・だけれど。
(・・・・私のそれと彼女のそれでは、意味が違う。)
私が鬼兵隊に連れ去られたあの出来事は、今思うと“解放”である。
・・傀儡から、あの人形箱から連れ出されることで私は縛りから解放されたのだ。――しかし。
・・・・・――――彼女は。今目の前で鎖に繋がれて、こちらを睨みつけている彼女にとって。
・・・“絶望”だろう、この出来事は。否、“死”かもしれない。
その肌の色からして人間でないその裏切り者へ、多少の同情の念は湧いたけれど・・。
「――――貴女が、春雨の裏切り者ですか」
・・残念ながら私の心がそれに動かされるなんてことはない。彼女はその眼にこもる憎悪と敵意を増幅させた。
529人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユイ - 完結おめでとうございます。とても素敵な作品で、最初の方から休まず一気に読んでしまいました。それに、描写がとても綺麗でもあり、妖艶で惚れました。最高です。 (2019年10月20日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 流れるような描写がすごく綺麗でした!読了後に「色は匂へど散りぬるを」の最初の方を読み返して夢主の成長を感じ、色んな意味で強くなったなあ、なんて思ってしまいました。最後に、素敵な作品をありがとうございました! (2017年5月9日 18時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 完成おめでとうございます!初めて見たけど面白かったです!! (2017年3月26日 18時) (レス) id: 8a0b328429 (このIDを非表示/違反報告)
碧瀬(プロフ) - とても素敵な作品でした。完結おめでとうございます。 (2017年1月29日 1時) (レス) id: 33020b63e9 (このIDを非表示/違反報告)
呪者 - あぁ!高杉むずかしい!完結おめでとうございます!(^^) (2016年8月24日 10時) (レス) id: e80216b179 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年3月23日 23時