暗雲 ページ8
「――一体、どういうことでしょう」
神妙な私に武市さんは「そう大したことでもないですけどね」と。
「ただ、先程例の裏切り者――・・いえ、最初に裏切った方ですよ。ややこしいですけど。
ともかく彼女が見つかったらしいんです。まだ艦の中からは出ていなかったようで」
「・・・・・・それ、大分大したことのように感じるのですが」
「そうですか?」
・・事件の急展開だというのに、彼は何でもないような顔。
・・・・・・私は何故武市さんがそんなに落ち着いているのだかわからなくて、少しだけ不思議だったのだけれど・・・、
「まぁ、彼女が見つかったからといって彼女の協力者がすぐ見つかるわけじゃありませんからね。こういうとき事実を言って頂くのが一番大変なんです」
・・・どうやらそれが理由らしくて、すぐに納得した。私はこのようなことに直面するのは初めてだけれど、彼らは違うのかもわからないのだし。
ともかく今面倒事がそこまで進展しているというのはわかった。・・けれど。
「・・それが何故、私に繋がるんでしょう?」
――そこが謎である。
確かに私とて鬼兵隊の一員だ。だからその面倒事と無関係でいられるなんて微塵も思っていない。・・いない、けども。
(・・・――――先程の、武市さんの言い様・・、)
――まるで、私が特に巻き込まれるとでも言うかのような口調だった。・・鬼兵隊として少しだけ関わる、なんてレベルではないくらい巻き込まれるというかのような。
「――何か、あるんですか?」
武市さんを窺いつつそう聞いてみれば。
「・・何かあると言いますかねぇ。・・・・ま、貴方だけが巻き込まれるわけじゃありませんよ」
「・・・・・つまり?」
「裏切り者は女性だと言ったでしょう。そして今彼女は囚われている。更に言えば我々は彼女から真実を聞き出さねばならない」
そうなれば自然と担当者は同性になります、なんて。
「といってもそういうことに駆り出せるほど信頼のおける女性の人材は精々二人しかいませんから。その二人を総動員する予定です」
「・・・・・・・・・それは・・・、」
「――――貴方と、来島さんですよ」
全く人材不足には困っていしまいますね、と武市さんは肩をすくめた。
「――方や猪、方や嘘が苦手。・・・暗雲立ち込めたりとはこのことです」
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ユイ - 完結おめでとうございます。とても素敵な作品で、最初の方から休まず一気に読んでしまいました。それに、描写がとても綺麗でもあり、妖艶で惚れました。最高です。 (2019年10月20日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 流れるような描写がすごく綺麗でした!読了後に「色は匂へど散りぬるを」の最初の方を読み返して夢主の成長を感じ、色んな意味で強くなったなあ、なんて思ってしまいました。最後に、素敵な作品をありがとうございました! (2017年5月9日 18時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 完成おめでとうございます!初めて見たけど面白かったです!! (2017年3月26日 18時) (レス) id: 8a0b328429 (このIDを非表示/違反報告)
碧瀬(プロフ) - とても素敵な作品でした。完結おめでとうございます。 (2017年1月29日 1時) (レス) id: 33020b63e9 (このIDを非表示/違反報告)
呪者 - あぁ!高杉むずかしい!完結おめでとうございます!(^^) (2016年8月24日 10時) (レス) id: e80216b179 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年3月23日 23時