容易く知れる ページ24
――――――――
――現在地、艦内のとある廊下。
・・こつりこつりと響く足音を聞きながら、私が考えるのは。
(――“容易く知れる”・・・。)
・・・先ほどの無刹さんの言葉。“上層部しか知り得ない情報”を“容易く知れる”とはつまり・・、・・――無刹さんの想う相手が、上層部にいるかもしれないということ。
図らずも無刹さんはボロを出してくれたのだ。私を動揺させようと開き直ったばかりに。
そして私も、それを見逃すほど甘くはない。・・高杉さんに知らせなければと道を急いでいるのだけれど。
(・・・・彼と向かい合うと思うと・・・、)
――足はどうしようもなく重かった。もう数十メートル先まで迫ったその部屋の扉を想像するだけで、その向こうで煙管をふかしているだろうその人を想像するだけで。
・・・もう、冷静さを失ってしまいそうだった。前高杉さんの部屋を訪ねたときと何ら変わったことはないはずなのに、どうしようもなく胸が締め付けられてしまって仕方ない。
(――――でも。)
本当に、今は。この件が片付くまでは。
・・・・多分、そんなことを考えている場合じゃない。
頭の中を埋め尽くすそれを、どこか彼方へと追いやって。
大きく吐いた息と引換に手にした少しの冷静さを逃がさぬよう、私は強く両の拳を握り締めた。
*
「―――失礼します。・・入ってよろしいでしょうか」
――そして、とうとうやってきてしまったそこ。・・高杉さんの部屋。
いつものように聞こえる「入れ」なんて声に、有り得ないくらい心の臟が跳ねた。
・・しかし、そんな動揺を気取られてはならない。至って平常を装いながらその扉を開き。
「・・・・突然申し訳ありません。・・少しだけ、用がありまして」
「・・・用?」
開いた扉の向こう、高杉さんの目がこちらを向いた。・・どくりと何かが音を立てたけれど、聞かなかったこととして。
「――裏切り者の件についてです」
一歩そこへ足を踏み入れつつ、言った。
「何かあったか」と高杉さんは白い煙をふぅと吐き出している。
・・・・ともかく、報告をしなければ。私は頭を切り替えながら彼を見返し。
「・・あの、ですね」
――――そして、口を開いたのだった。
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ユイ - 完結おめでとうございます。とても素敵な作品で、最初の方から休まず一気に読んでしまいました。それに、描写がとても綺麗でもあり、妖艶で惚れました。最高です。 (2019年10月20日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 流れるような描写がすごく綺麗でした!読了後に「色は匂へど散りぬるを」の最初の方を読み返して夢主の成長を感じ、色んな意味で強くなったなあ、なんて思ってしまいました。最後に、素敵な作品をありがとうございました! (2017年5月9日 18時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 完成おめでとうございます!初めて見たけど面白かったです!! (2017年3月26日 18時) (レス) id: 8a0b328429 (このIDを非表示/違反報告)
碧瀬(プロフ) - とても素敵な作品でした。完結おめでとうございます。 (2017年1月29日 1時) (レス) id: 33020b63e9 (このIDを非表示/違反報告)
呪者 - あぁ!高杉むずかしい!完結おめでとうございます!(^^) (2016年8月24日 10時) (レス) id: e80216b179 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年3月23日 23時