【銀魂】有為の奥山今日越えて【高杉晋助】

その人と夜桜 ページ37

――もうずっとそこにそびえているその樹は今も私たちを見下ろしていて。

･･ところどころに咲いた小さな薄紅に、時の流れを実感した。




(･･――あぁ、そうか。)


もう季節は春なのか。･･･宇宙からは窺い知れなかったけれど、地球ではもうそんな季節なのか。




月光に照らされる桜はどこか何かを彷彿とさせて――――･･、･･･あぁ高杉さんか、と気づくまでそうはかからなかった。


･･何故、彼なのかというと。




――――まだ宇宙に向かう前。あの船の上で励んだ真剣の稽古の合間。

･･･極稀ではあったけれど、彼を見かけることがあった。



煙管を片手に月を見上げるその人はどうにも綺麗で、儚く。･･――どこか、恐ろしい。




･･その感覚は今と同じだ。月夜に桜を見たこの感情と同じものがあの時の彼に対しても湧いた。




(･･―――あまりにも綺麗なものは、時に恐ろしく感じるもの。)



――高杉さんと夜桜。･･良い例だ、全く。




･･･と、私が苦笑を漏らしたそのとき。





「――･･咎、人･･･？」



震える声で父が零した。

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