悲しい、ような ページ34
――母屋とは廊下で繋がったその建物。・・とても一人の為だけに作られた寝室だなんて思えない。
けれどもそこが、紛れもない父の寝室である。
(――あぁ、でも・・・。)
・・変わっていない。
白い外壁は以前と変わらぬまま月の光を受け止めているし、黒い瓦屋根だって同様だ。――私がいようといまいと変わらない。
(・・・・悲しい、ような、)
――どうでもいい、ような。
何がともあれそこへ入ろうと、その独立した建物へ一歩近づいたその時。
「―――旦那様!賊でございます!!」
――屋敷の奥から聞こえてきたそんな声。・・・護衛の一人が騒ぎを父に伝えに来たらしい。
即座に木の裏側へ隠れた私に気づかず、彼は父の寝室の戸を引き。
「相手はあの鬼兵隊でございます、旦那様!お嬢様が居られるやもしれませぬ!!」
そう精一杯叫んでいた。寝室の中では父が目覚めたようで、ガタゴトと音がする。――丁度いい。
その物音に紛れるようにしてゆっくりゆっくり護衛の背に近づき。
・・ざく、ざく、ざく。
私の足が土を踏む音が彼の声でかき消される。・・・・そして、斬り合いの間合いが手に入る最後の一歩を私が踏み出そうかというとき。
「――――・・っ、何奴・・!」
我に返ったかのようにこちらを振り向いた、護衛。――私がその一歩を踏み出し終えるのと同時だった。
腰に差した刀を抜いて、彼へと思いきり振り下ろして。
「・・・――あ、なた・・は・・・!!」
「・・御免なさい。だけれど峰打ちですから、安心して頂いて結構ですよ」
――勿論のこと、意識なんて保てやしないだろうけど。
驚愕の色で染められたその護衛は、音もなくその場に崩れ落ちていった。・・そして。
「――――何奴だ」
――私が刀を一旦仕舞ったのを見計らうように、聞き慣れた声が建物の中から投げられた。
・・・・・そう、紛れもなく。
「・・私――・・深津左衛門に、何か用か」
・・・・・・・その、私という傀儡の操り手の声が。
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minami☆(プロフ) - いつも見てます。頑張ってくださいv(*⌒0⌒)v (2015年3月18日 7時) (レス) id: ffe66244c5 (このIDを非表示/違反報告)
高杉総悟 - 俺の姉のも受験生なんです。「受かってるかな?」(>_<)といつも言ってますぜ (2015年3月13日 22時) (レス) id: 8aa907f804 (このIDを非表示/違反報告)
中村@3/11受験(プロフ) - 応援コメ本当にありがとうございました!お陰様でなんとか終えられました・・ε-(´∀`*)結果はまだ分かりませんが、これからは以前の更新ペースに戻れるかと思われます。・・といってもやはり休日のみなのですが(^_^;) 精一杯頑張りますので、宜しくお願い致します! (2015年3月11日 17時) (レス) id: 0d3c6b7cce (このIDを非表示/違反報告)
くるぅある - 明日いよいよ受験ですね!!fight!!!!ですよ☆ (2015年3月10日 18時) (レス) id: 272b881e40 (このIDを非表示/違反報告)
高杉総悟 - 受験頑張ってください (2015年3月8日 19時) (レス) id: 8aa907f804 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年2月28日 22時