【銀魂】有為の奥山今日越えて【高杉晋助】

人形箱へ ページ30

「･･･――――むしろ、あの家で育った私は生きていなかったと言ったほうがいいのかもしれない」




あれは、もしやただの傀儡だったのかもしれない。――私という皮を被った、大人の道具。


･･･でも、今は違う。

今私は確かに道具である。･･そうであるけれど、意思を持っているのだ。




「――――高杉さんが私に息を吹き込んだのでしょうね。･･･ならば、今の私にとって深津の家は何ら重要なものではございません」




確かに私はあの家で生まれて、あの家で育った。･･あの家を出て、死んだ。


(････あぁ、なんだか。)



――不思議だ。驚く程。



だって、高杉さんは自我を持つ道具を望み、父たちは道具に自我など不必要だと切り捨てた。――それだけの違い。


たったそれだけの違いで私は父を殺そうとまでしている。世の中の奇妙さに私が少し苦笑を零していると。





「――･･･深津さん、貴方変わりましたね」

「･･変わる？」




――と、武市さんは感心したように一つ頷き。




「晋助殿もそれだから気に入ったんでしょう。貴方の変わり様は見ていて興味を引く」


「････興味、ですか」


「まぁ頑張ってくださいね。今回のことは晋助殿はもとより私も結構楽しみにしてますから」




ちなみに深津家に幼気な少女なんていませんよね、と付け足された言葉には苦笑を返した。透き通るような青空へちらと目を向けて。





――――深津家。･･私が入っていた、人形箱。

･･･それを壊すのだなと、改めて実感したのだった。

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