【とある】感情倫理

48 ページ48

どくどくと揺れる胸
この手の人間は信じちゃいけないって分かってる



真実を語るわけが無いとも思っていた




なのにこの女はそれを自ら教えようとしてる




『…どうせ嘘を教えて丸め込むつもりなんじゃないの？』

立「信用ないのね
ならこれはどう？貴女のその副作用、解決の糸口があるって言ったら？」

『っ、』




あまりにも、あまりにもそれは魅力的な誘惑


なんたってこれは、冥土帰しだって未だに解決策を見つけられていない




能力者になって、風紀委員なんてやっていれば力を使わない事は無理な話だ



能力の吸収は脳を、記憶の吸収は精神を蝕んでいく。



それに解放されればどれだけラクか



仮にも、この女は脳科学者だ
感情をまた覚えていくんじゃなくて、取り戻すことも可能なのかもしれない。




『教えてよ、昔のこと
私がなんでこんな体になったのか、記憶を無くしたのか…教えてよ』




全部全部、教えてよ。
思い出させてよ



この先、何年後、何十年後経っても
今の記憶を保持し続けたい


その方法があるなら…




立「ふふ、いいわよ」



赤い小悪魔のような唇が三日月に歪む



思わずごくりと生唾を飲んでしまったのは
本当に、自分の過去と言うやつが



やっとここで、知ることができるからか、なんなのか…

49→←47

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す