【とある】感情倫理

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冥「あの子の記憶障害は恐らく能力によるダメージだ」



ポツリ語られた言葉に重みを感じた

昔の映像でも見てるようにどこか前を向いて語り出す



人間の持つ能力は1人につきひとつ



それなのに、そんな能力のお陰で他人のAIM拡散力場を吸収し
自身の能力の様に振る舞う



能力吸収(AIMスティール)なんて芸当は
かなり繊細な精密な演算を用いる方法だ




それだけでも大層なことなのに
本来持ってない力までも組み込んで計算式にならべる


そうなれば脳への負担は、レベル6以上なのかもしれない




それに彼女は人の記憶までもを吸収する


しかもそれは読み取るのでは無く、自分の物にして



内部に蓄積されていく記憶は
時に、自らの精神に異常をきたす場合もあった




脳は感覚を、精神は記憶を
歪めて彼女から奪い混沌させていく




初めて彼女がここに入院した時
目が覚めた時は酷く混乱して発狂していた



それが回数を重ね、成長していく事に

彼女は疑問も興味も持たなくなってしまった



またか、と諦めにも似た感情


何よりも自分というものがわかっていないみたいに


それでも能力や自分が風紀委員ということは覚えていて



当たり前な情報は忘れていない


ぽっかり空いたのは感情と、彼女がこの病院に運ばれる前の記憶だけ




冥「僕が彼女に出会ったのは
とある研究所に出向いた時だった
小児患者を見て欲しいと言われてね
そこでみたのが、あの子だったんだねぇ？」



カプセルのような寝台に
幼き彼女が血だるまとなり横たわる姿は

冥土帰しの目に今も鮮明に焼き付いていたのだった

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