【とある】感情倫理

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一「サイコメトリーか？
お前、能力吸収っつう意味のわからねェ能力じゃなかったのかよ？」

『うん、だから今のは読心能力とは違う
私は彼から記憶を吸収したの』




読み取るのと、吸い取るのは全くの別だ

私のは記憶を映像のように読むんじゃなくて

自分が経験したように蓄積されていくのだ




触った方の男の最近の記録が私の思い出になり入り込む




食べたものに考えたこと、友人との会話に
この人に依頼を頼んだこと…




『…電話、非通知の番号で女と合流してる
そこでこいつらは私の名前と写真を受け取って連れてくるように頼まれた

成功報酬は100万、最初は信じてなかったけど前金として20受け取ってる
…私があの病院に運ばれたのもその女が知ってた』



と、わかったのはここまでだ


こいつらときたら依頼主が誰なのか疑問に思ってもいない


しかも20万速攻で使ってたし




『結局収穫なしかぁ
私を狙ってるのは誰なんだよ』

一「……」

『ん、どーかした？』

一「なンでもねェ…ってオイ？」



素っ気ない返事に被るように
今度は私が急にむせる



飲み物を詰まらせたように、ゴホゴホと
なにか吐き出したい衝動に結局何も出てこない




記憶の吸収はいつもこうだ


それでも今回はだいぶ、いやかなりマシだ

吐き気と呼吸器官の異変だけで終わってくれた




『…だいじょーぶ』



さすがにすぐ病院は戻りたくないし



一「そォかよ」



なにより
この人に何度も運ばせるのも悪いし

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