隣人事変 III【角名倫太郎】

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久しぶりにソファーで眠った体はバッキバキ


別に1人だって眠れるし。

あの部屋は私の家に変わりない。



『……』



なのにバックミラー越しに見る倫太郎が酷く懐かしく感じる



角「運転お疲れさま」

『うー寒っ』



コートは結局出し忘れた


おかげで今日も震えた体をさすって部屋に帰る羽目に

足音を重ねながら歩く倫太郎も寒いのか肩を縮こませてるや



角「A？」



そんな彼のおいなりさんみたいな色のブレザーの裾を掴んだ


昨日は何故か行っちゃいけないような気がして
まるで正解と言う様に倫太郎もこっちへは来なかった



『…勉強、できた？』

角「あー…全然、治は食ってばっかだし2人も結局歌ってた」

『だろうね』



そういえばテスト勉強を一緒にするって約束したな。

…と言っても今日はもう勉強なんてする気は起きない


なんだか、変

ドロドロする。



角「…ねぇ、」

『？』

角「そっち、寄っていいよね？」



断らないのをわかってる言い草だ

変なことは何も無い
私たちはお互いの家を行き来する隣人で

倫太郎は倫太郎で、倫太郎の付き合いがある



あの子の前にいる倫太郎も

いつも隣にいた倫太郎も

そして有無を言わさないと言わんばかりな目を向ける倫太郎も

全部ぜんぶ、同じ。



『おいで、寒いけど』

角「へーき」



勝手知ったるが如く、扉を開けて玄関で靴をぬぐ倫太郎を追いかけてリビングへ体を滑り込ませると、電気をつける前に倫太郎が振り向いた



角「で、なんで突然化粧してんの？」



カーテンの無い、月明かりだけが射し込むこの部屋はそれはそれはさみぃ家だ


掴まれた腕から伝う体温が熱いと思うほど


熱がじんわりと、広がってジワジワと侵食していくみたい



ただ、まるで獲物を見つけた獣みたいな目をする倫太郎も

大事なお隣さんで、倫太郎(洗浄機)にかわりない



空いた手が私の口元をなぞる


色も乙も無い私はそんな仕草になんの反応も魅せれない



要らないもので埋め尽くされたこの部屋はまるで私の鳥かごみたいだ


だから私は懸命に囀るの




『シオンさんが、やってくれた。
女なんだからって…』

角「女、ね」




寒いのに、早く体を温めたいのに、喉が渇いてしょうがない




お願いだから、


君だけはいらないなんて言わないで…


お願いだから、


なんでもいいから、必要として。

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