隣人事変 III【角名倫太郎】

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シ「これあげる」

『何コレ』



今日も今日とて麗しいシオンさんが手のひらサイズの筒を渡してきた



シ「口紅、店員に勧められて買ったんだけど
思いのほか明るかったのよね」

『確かにシオンさんは暗めの赤のが似合うかも』



消えそうに燃えそうなワインレッドな唇

対してこれはスカーレットのように真っ赤っか



『使う機会あっかなあ』



化粧なんてめったにしないから



シ「貸して
せっかく教えたんだから、すればいいのに」

『んむ』

シ「それに……アンタだって女なんだから。」




目を細めて微笑む色っぽいねーさん


アイシャドウにマスカラまで付けると満足そうに煙草吸いに行ったのだった。





.






.






大きなノックをして扉を開ける、中にはあつみょんがいた。勉強しろ。



渡辺「待ってました店員さーん！」

治「たこ焼き！それとチャーハンと野菜スティック俺のや」

『勉強してないにも程がある』



テーブルには辛うじて2冊のノートが広がってるだけ



侑「あれ？メリーちゃん化粧しとるー！」

渡辺「ホンマやさっきはしとりませんでしたよね？！」

『あー…うん、さっきしたばっか』



マイクを通したまま喋るツム
負けじと大声なワタナベ様


サムは早速料理に夢中
これで最後だ、勉強しろ。


2人が顔を覗き込んできた



『あの、』

侑「メリーちゃんって、こうして見ると色っぽいなあ」

渡辺「顔ちっちゃいんスね」

『……』



褒められてるのか、そうかそうか、照れる。



角「A、仕事中でしょ
お前らも引き止めるの禁止」

渡辺「あっすんません」

侑「えーメリーちゃんもう戻ってまうの？
数学ちょこっとでえぇから教えて…！」



倫太郎に腕を引っ張られて2人から離される

残念ながら今日は蓮見さんがいない分厨房も回さねばならない



『ごめんよ、今日は教えてあげられないや』



あからさまにしょんぼりするツムとサムにもう一度謝って



角「A、今日20時上がりだよね？」

『うん、一緒に帰る？』



最後に倫太郎、ちっちゃくこくんと頷いた返事



渡辺「えっえっ！？今のやり取りどういう事ですか！？」

治「2人家が隣やねん」

侑「しかもメリーちゃんバイクやから、2ケツで帰るんやで、ずっこいわ」

角「ノート撤収しまーす」

渡辺「すんません角名様〜！」

侑「慈悲を〜！」

治「うまー」

『わぁー』



賑やかしい男子高校生

その中で倫太郎はとても静か


なんだか少し、緊張した。

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