隣人事変【角名倫太郎】

47 ページ47

▼side 角名




シャワーを浴びて着替えを済ますとAは既に料理を始めていた



さっきの濃い化粧は無くなって、すっぴん状態

いつもの見慣れた彼女だ



曲名もアーティスト名も知らないけど、多分歌える自信がある音楽は止んでいて、揚げ物をあげる音が部屋に響いていた



角「唐揚げ？」

『オーソドックスにね〜
何作りゃいいかわかんなくて、とりあえず注文が多いのを作ろうって』




さえばしで油の中にいる唐揚げをつつくA


もしかして早くから準備してくれてたのかな？

別に約束とかしてなかったのに、ただ今日はバイト休みだって聞いてただけ


え、なにこれ普通に嬉しいんだけど



『わっちょ…少年？』

角「名前」

『り、りんたろさーん？』




Aはめったに化粧なんてしない
だから今日、初めてみてビックリした


もしかして誰かに見せるためにしたの？って思ったらムカついた



前にAが風邪ひいた時に、寝言で一度だけ言った名前の人？って思ったらいてもたってもいられなくなりそうだったのに


俺のためにご飯作ってくれてるとか、ヤバすぎでしょ。




すごいドキドキするけど、2回目となれば戸惑うこともない


何日も会えなかったから寂しかったし


台所に立つAをもう一度後ろから抱きしめた




『油が逆襲してきたら火傷するよ？』

角「そしたらAもじゃん、タンクで揚げ物とか」

『エプロンしてますぅー
…全く、そりゃ誰よりも試合してきたら疲れるよね、思う存分よりかかりたまへ』




そう言って頭を撫でてくるとか
俺の事なんだと思ってんの？



今までだって顔を合わせない日が続くとか普通だったのに

けどなんだかんだ隣に住んでるのと、遠くにいるのとじゃわけが違う



心配になってめちゃくちゃライン送ったり

不安になって電話かけそうにもなった




角「ねえ、俺がいなくて寂しかった？」



こんなこと聞くなんてダサ。



『すんっげぇ。』



上を向きながら笑ってそういうA
いつものA

自分で聞いといてヤバいなって思った。



俺、そうとうこの人にハマってる。

48→←46

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す