隣人事変【角名倫太郎】

40 ページ40

角「夜の海って不気味じゃない？」

『わかるー』



宣言通り、寄り道も寄り道

バイクを走らせてやってきたのは海である

波の音だけが聞こえて暗闇にうっすらと波が見えるの




『じゃ、腹割って話すか』

角「吐き出しに来たんじゃないの？」

『その前に少年も色々聞きたいでしょーよ』



砂浜に続く石段に座ると、同じように隣に腰を下ろした倫太郎


稲荷崎の制服はブレザーで、ネクタイ

少しだけ、リーマンっぽいと言ったら怒るかな？


けど多分中身は結構年相応だと思う

私の放つ言葉ひとつひとつに、向き合ってくれようとするくらいには。



『私さあ、去年はこんなんじゃなかったんだよね
黒髪のおさげちゃん、スカートも長くって』

角「え、そうなの？」




半信半疑といった表情
そらそーだ。


今やバリバリのギャル、ん？不良？

スカートも短くして、自慢のEカップのせいでシャツのボタンはガバガバよ
風通しよくしないとねーいやよねー。



まあ…ルーズソックスは多分もう履かないかな？

暑いし、ぜんっぜん履いてる子いねぇの。

そもそも私ギャルじゃないし。



『うん、真面目地味系、ビックリダヨネー』

角「髪を染めたのはいつ？」

『留年決まった時かな
この際なら思っきりバカになろーって』

角「成功じゃん」

『あっは！それな〜』



ついでに髪まで切っちゃった



『…で、セブンティーンの私はある日初めて学校をサボります
あれはドキドキしたよー
で、こら堪んねぇやってなってたら単位が足りなくなってた』

角「それで留年？」

『うん、お陰で家追い出されちゃったけどね〜
ま、その方が気が楽だし良いってもんなんだけどさ』

角「ずっと住んでた訳じゃなかったんだ」

『うん』

角「…ねぇ、どうして学校サボろうって思ったの？」




倫太郎はずるい思う


だってそれってさあ、全部を知りたいって事と同義じゃんか

ずるいと言うかずる賢い。


そんな、優しい顔で聞かれたらなんだって答えちゃうよ


ついさっきまでヘラヘラ笑えてたのが嘘みたい

まるで子供のように、あのねあのねって


本当に聞いて欲しくなっちゃうの

…多分、彼に少しでも甘えたい。なんて思ったのはこのせいだ


バレーボールなんて余裕で掴んじゃう大きな手が頭を撫でる



何も知らない優しい人に何食わぬ顔で接してたのが後ろめたいのに



『…引いたらごめん』



こんなこと言う私も同じようにずるくて、そしてとっても怖がりだ

41→←39

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す