隣人事変【角名倫太郎】

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▼side 角名




あっという間に温くなったタオルを濡らしてもう一度彼女の額に乗せる時


前髪を払うとやっぱり眉毛がない


うっすらとあるだけで、そういう所見るとこの人も化粧とかするのかなって、見たことないけど




ねぇ、化粧するとどんな顔？


本当はいくつで、何をしてる人なの？


知りたいことはまだまだたくさん




俺はそんな鈍感じゃないし、全部を信じる程子供でもないから


この人が言ってることは適当なんだってわかる



そんでこれが恋だってのも分かってる




きっかけは本当にどうしょうもない

双子みたいに隣に住んでる人は女の人で、若くて、それだけで少し意識したりもした



もちろんこれは下心というもので。




安いからって理由で田舎寄りのアパートに暮らせばちょっとくらい夢もみるデショ




まあ実際はドラマで観るような出来事なんてない



作りすぎたおかずをくれるような人でも、ひたむきに夢を追う女性でもないんだろう



ソファーをベッド変わりにして、家に鍵もかけない大雑把な人だ。





儚いなんて言葉、かけ離れてるような人なのにフラッとどこかに行ってしまいそうなのがきっと引かれる理由。



手に入れてみたいとかいう、エゴ




『うう…』

角「(起きた？)」




しばらくスマホをいじってると唸り声をあげて寝返りをうったミノムシ


するっと布団から腕が落ちて、ダラりとした



角「ええ、熱あんのになんでタンクなの…」



だから風邪ひくんじゃん、と思って腕を布団の中にしまおうとすると


肌色に一線の赤い跡を見つけた




角「…なにこれ、血……？」



どこから出てるのか目で追って見ると、腕から


ドクンと、心臓が脈うった



彼女の腕には無数の傷跡
新しそうな、そしてしっかりと塞がってくっきりと跡になったものまで



ねぇ、Aさん、痛いくらいがちょうどいいって何にですか。




『う〜………ご、め……なさ…』

角「…」




ねぇ、Aさん、あなたはいったいどんな人生を歩んできたんですか。



『………アキ、ラ…』

角「！」




その人は、彼氏ですか。

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