雨のち飴《青》 (ページ10)

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あれから何時間経ったんだろう。

ふと見た窓ガラス越しの空は少し暗くなって

時計はもうすぐ六時。

お昼休憩からずっと集中してたから、目と肩が悲鳴をあげそうになっている。

んーっと伸びをして甘ったるいチョコレートを口に運んだ。

ピコン

突然鳴るスマホ。

送り主は ..... 翔太か。

渡辺翔太先に外出て待ってるから。

あ、そっか。今日一緒に帰る約束してたっけ。

チラッと翔太を見てみれば、せかせかと帰る支度を始めていた。

向「あれ、もう帰るんすか」

渡「あー、うん」

向「へえー、用事とか？」

渡「まあそんなとこ」

再び携帯を触り

A分かった、片付けて行くね

返信をして、私も帰る準備を始めた。

阿「何、Aも帰るんだ」

「今日は定時で帰ろっかなーって。」

阿「ふーん、一緒に帰んないの？」

「え？」

阿「翔太。」

「あ、えっと、うん」

阿「一緒に帰るんだね」

何故か分からないけど俯いてしまった私。

阿「頑張ってね」

そう言っていつも通り、二回頭をぽんぽんと撫でて再びキーボードをかたかたと動かした阿部ちゃん。

気付いたら翔太はもう居なくなってて、早いなと感じつつも急いでジャケットを羽織る。

「お先です」

ぺこっと挨拶をして、皆からのお疲れ様という声と共にひらひらと振る手を見て優越感を抱きながら

私は彼の待つ所へと早足で進む。

「早く来ないかな .... 」

エレベーターってこう焦ってる時に限って遅いんだよね。

手鏡をバックから取り出し時間を有効活用。

色付きリップを唇に塗って、血色が良くなったことを確認しんぱっと最終確認をする

前髪も整えて、完璧。

やっと来たと思いながら、乗り込み一階を選択した。

やっぱり、謝られるのかなとか、変な空気だったらどうしようとか、何の話すればいいんだろうって頭の中がぐるぐるする。

．

そんなこんなで着いた一階フロア。

どれだけ悩んでても、答えは出なかったので

しぶしぶ足を動かした数十秒後。

ドンッ

「いたっ、」

前からきっと走ってきたんだろうなと想像つけるぐらいの風と共にやってきたのは一人の男性。

偶然エレベーターから出たところだったので扉に巻き込まれなくて済んだ。

バランス感覚の悪い私はぺたっと尻もち。

？「すみません、大丈夫すか、？」

と行儀良くお辞儀をするのはスラッとした足の長いテクノカットの男性だった。