雨のち飴《青》 (ページ19)

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watanabe side

渡「でさ、勢い余って言っちゃったんだよね」

佐「なんて」

渡「あいつのこと好きなんだろって」

佐「あーー」

渡「そしたら＂翔太の馬鹿＂って言って帰ってった」

なんだよ、馬鹿って。

いや確かに馬鹿なのは否めないし、うんって感じだけど、あんな顔で言われたらさすがに頭から離れない。

佐「ついに言っちゃったかー」

渡「いやだって、好きなのか好きじゃないのか分かんなかったから」

佐「泣いてた？彼女」

渡「泣きそうだった」

なら尚更駄目じゃんと言って俺よりも萎える佐久間。

渡「なんでよ」

佐「え、分かんないの？」

渡「いや、お前誰だよ(笑)」

佐「いやー、さ、ほんとに恋愛下手だね」

分かってる。

学生時代に抱えた恋愛の悩みとか特に無かったし

求められるからそれに答えて、飽きたら自然消滅やら破局やらして何とかしてきた。

自慢じゃないけど自分から行くとか幼稚園以来かなって感じ。

だからこんなにも悩んでて。

脳内パンクしそうだわ。

佐「追いかけた？Aちゃんのこと」

無言で首を横に振る俺。

佐「今頃、別の男に慰められてたりしてね」

佐「っ、ごめんって」

冗談でもそれは受け付けられない。

追いかける、なんて考えたこと無かった。

渡「はぁ.....。佐久間、、」

佐「その顔、Aちゃんに見せてあげたい」

佐「すっごい捨てられた子犬感」

渡「捨てられてねえし」

佐「いや、ツッコミ所そこかよ」

佐「大丈夫。素直になりな」

渡「素直になるのが一番ムズい」

俺の性格上、素直になれない。

特に異性には。

女性と居るとどこか緊張して自分を取り繕っていい男を演出する。

それが楽な時もあればしんどい時もある。

．

てか、あの酔っ払った俺らどこ行ったんだろうね。

今ならどれだけ酒を体内にぶち込んでも

酔えない自信がある。

佐久間は単純に酒に強いだけ。

こうやって真面目に相談してると酔い覚まして

真剣に聞いてくれる。有難い。

渡「あー、恋愛って面倒」

佐「そんなもんだよ」

渡「ふぁあ....。眠くなってきた」

ちょ、おいここで寝るなよと必死に俺を叩き起す佐久間

．

久しぶりに二人で帰った道。

来たことの無い居酒屋。

彼女の心臓音。

全てがまた俺の綺麗な思い出になっていく。

．

そして、俺は今日も彼女を傷つけた。

頭から離れないあの表情。

忘れられない。