雨のち飴《青》 (ページ11)

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綺麗な顔立ち。こんな社員さん、居たっけと思わせるほどの顔面偏差値。

「あ、ごめんなさい、大丈夫です」

立ち上がろうとした時、スっと差し伸べられる手。

？「立てますか？」

「立てます立てます、すみません」

手を借りるのはとても申し訳無いと思いそのまま立ってしまった。

？「俺、目黒って言います。営業の」

「えっと、桜木です」

高身長すぎる。初めて見たかも。こんなに身長が高い人。

目「あ、髪」

「え？」

目「乱れちゃってますよ」

すかさずまた伸びてきた手は私の髪型を直してくれた。

優しい人。

「ありがとうございます」

では、失礼しますと言われその場から居なくなってしまった。

優しくても、目の奥は少しだけ冷たい表情。

ハッと我に返り、また彼の待つ所へと走って行った。

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watanabe side

定時で上がることはそんなに無いから久々のまだ少し明るい空を見て優越感に浸る。

平然を装うとするけれど鳴り止まない心臓。

なんでこんなに緊張しなきゃいけねぇんだよと思いつつも彼女がやって来るの待つ。

「はぁ、っ」

両手で顔を覆い、バクバクとうるさい胸を恨みそうになった。

にしても久しぶりにAと帰るかもしれない。

いつもは飲みに行ったりするのも現地集合現地解散だったりするから、中々二人きりで歩くことは無い。

なんて言おうか。脳内でシュミレーション中。

「しょ、た！」

はあはあと肩を揺らし息をする彼女。

急いで来たんだろうなと思わせる崩れた前髪。

渡「走ってくんなよ、危ねぇだろ」

そう言ってわしゃわしゃと崩れた前髪を更に崩してやった。

「だって、待たせちゃ悪いじゃん」

息を整え、手ぐしで前髪を整える彼女。

俺の為に走ってきてくれたのかと思うと嬉しさが一気にこみ上げ、俺の口角は上がりっぱなしだった。

バレたら恥ずかしいので手で口を覆いながら

渡「行こ」

と言って君の一歩前を先に歩いた。

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しばらく続く沈黙。

先に口を動かしたのは彼女。

「そう言えば、今日金曜日だったね」

辺りを見渡すと仕事終わりのサラリーマンやOLで駅が溢れかえっていた。

がやがやとする中

渡「なあ、」

と言って本題に踏み入る。