第四十四話 ページ46
墓に白い花を手向け手を合わせる。真逆”自分の墓参り”をする日が来るなんて思っていなかった。
太宰さんは足元で寝そべり彼の愛読本を読んでいる。柔らかな風が髪や服を揺らした。
「あの、太宰さん。流石にやり過ぎだったのでは？」
「中也の事かい？少し嫌がらせをしただけだよ。困惑した声は最高に良かったねえ」
「性格悪い……全て話したらいいのに」
昨晩、私は太宰さんから全てを聞いた。
異能生命体である私を中原さんが買ったこと。私の異能力をマフィアの首領が利用していたこと、敵組織の長に撃たれ死にそうになり、中原さんは腹を立て汚濁を遣うが、身体の限界を私が察知して異能力を使い中也さんの身体へのダメージを私が受けた事により死んだこと。死んだことにより、器を失った異能力が現在の私に乗り移って今が在ること。
そして中原さんの恋人であったことも
首に噛み付かれた痕が痒く、爪で掻き乍ら太宰さんを見下ろす。
「記憶を戻すとは云っても、痕が残る程強く噛まなくても良かったと思うんですけど…。それに中原さんも此の痕は気付いてましたよ」
「だよねえ。私の異能無効化がある以上、君の首を噛んだとしても主従関係が形成される訳じゃあ無いから、記憶を蘇らせる為には好都合だと思っていたのだけどねえ。……ちぇ、矢っ張り中也じゃないと駄目なのか」
前世に経験した記憶に深く刻まれている行動を再び行う事によって、記憶が断片的に蘇る。…と太宰さんは云っていた。何度か感じた既視感と動悸がその合図だったらしい。
「記憶が戻るのなら中原さんは手段を選ばなそうなのに」
「…中也は恐れているのだろうね、また君が異能力を使えるようになって黒社会に再び引き戻してしまうのが。でも君は本当に記憶を蘇らせて良いのかい？君には君の人生があるのだよ」
「全く問題はありません。前世の私は自分の命を惜しまずに中原さんに捧げたのでしょう？そして生まれ変わった。こんなにも健気で純粋な私を愛してあげたい」
小さな墓をまるで我が子の様に優しい眼差しで見詰め撫でる。
「……それに、記憶が無い私でも中原さんに惹き寄せられちゃいました。だから、太宰さん──貴方が撃って下さい」
「其の言葉を待っていたよ」
太宰さんは全てを見通している様な黒瞳で私を見た。
持ち帰ったアタッシュケースを開き銃を手に取って太宰さんに渡す。太宰さんは銃口を私に向けた。
小さな丘で乾いた発砲音が軽快に響いた。
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椛 - 時間があれば読み返しています！！とても魅力的な作品を読ませていただきました！！ (2022年3月23日 22時) (
レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます！格好良さを全面に出したかったので良かったです〜！新作も宜しくお願いします！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました！また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます！最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています！！ (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるなか | 作成日時：2021年11月26日 22時
