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第三十四話 ページ36

小さな丘にぽつんと佇む墓があった。大きな木が其の墓を守るようにどっしりと聳え立っている。一人の青年は毎日決まった時間に此処に足を運び、墓に花を手向けていた。

「A、今日で御前が死んで一ヶ月だ。全く実感が湧かねえよ」

青年は墓の隣に座り込み俯いた。ふわりと吹く風が木の葉を揺らし、青年の髪を靡かせる。

「Aが居ねえと仕事も儘ならねェしよ、詰まらねえ日常になったモンだ」

そう呟いた青年は力無く笑った。勿論此の場所には青年一人しかおらず、墓に向かって喋りかけるが当然返答は返っては来ない。

「俺もいっその事ーーーー」

「おーい中也!君も自 殺の趣味があったのかい!」

「うおっ」

中也と呼ばれた青年は突然の大声に驚き後退りした。
ひょっこりと墓の裏から現れた青年は包帯に巻かれた手をひらひらと振る。

「やあ、君も墓参りかい?」

「見りゃあ分かるだろ。…つか太宰、手前も居たなら云えよ」

「うっふふ。面白くて聞いてた」

「手前な……」

中也は太宰と呼ばれた青年の綺麗な顔をじっとりと睨み付ける。
太宰は立ち上がり、中也の隣に腰を掛けると墓に頭を預け空を仰いだ。

「いい天気だねえ。最高の自 殺日和だ」

「今なら手前の云う、美女と心中したくなる気持ちが分かるぜ」

「ええ、私は中也と同じ趣味ヤダなあ…」

「今すぐ殺されてェか?」

中也の右手が素早く飛ぶがひらりと躱す太宰。中也は大きい溜息を吐くと、立ち上がり背中を伸ばし「行くわ」と一言残すとその場を立ち去ろうとするが、太宰は止めた。

「中也」

「なんだよ。まだ何かあンのか」

「私が意味も無く君の前に姿を表すと思っているのかい?」

「……Aの事か」

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- 時間があれば読み返しています!!とても魅力的な作品を読ませていただきました!! (2022年3月23日 22時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます!格好良さを全面に出したかったので良かったです〜!新作も宜しくお願いします! (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました!また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます!最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています!! (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるなか | 作成日時:2021年11月26日 22時

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