第三十三話 ページ35
「全く。私が来る前に汚濁を遣うなんて莫迦なのかい？」
太宰は呆れた声で云った。然し、中也はAの身体を抱え項垂れている。前髪に隠れた表情は虚であり、絶望の色を浮かべていた。
「太宰…どういう事だ。如何して、如何してなんだよ…」
中也の背中が震える。Aの青白い顔に一粒の水滴がぽたりと落ちた。
「如何してAが死んでンだよ」
「如何しても何も。君が汚濁を遣って死 にそうになっていたからだよ」
「だからってAが異能力を遣って俺への負荷を軽減したってのか？」
「Aちゃんの身体を見れば分かるだろ」
太宰はAの首元の襟を緩め袖口を捲り、中也に「現実を見ろ」と云うように見せ付ける。
初めは首元の小さな赤い印だったものが、今では赤い印が蛇のように全身を這い、顔の半分、指の先、足元迄真っ赤に染めていた。
中也は歯を食いしばって黙った。其の姿を見た太宰は大きく溜息を吐く。
「私が君の汚濁を無効化しに来た時、Aちゃんはかろうじて意識があってね。私の姿を見て心の底から安心したような笑みを浮かべていたよ」
「嗚呼そうかよ」
「中也だけでも生き残るように異能力を遣ったって。私が必ず汚濁を無効化しに来る事も信じていたみたいだ」
「……そうか」
中也の声に覇気はなかった。只々現実を受け入れることが出来ない様子だ。
「なあ太宰。本当に死 んだのか」
「呼吸もしていないし心臓も止まっている。瞳孔も開きっぱなしだから脳も死 んでいるね」
太宰は静かに云う。
中也はAの髪を花に触れるように優しく撫でた。
「俺の所為だな。俺が此奴を買わなければ」
「今更後悔しても遅いよ中也。此れは彼女の運命だったんだ。それに、Aちゃんは君の其の言葉は絶対に聞きたくないだろうね。」
「何故分かる」
「Aちゃんは中也の隣に居る時は心の底から幸せそうな顔をしていたからだよ」
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椛 - 時間があれば読み返しています！！とても魅力的な作品を読ませていただきました！！ (2022年3月23日 22時) (
レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます！格好良さを全面に出したかったので良かったです〜！新作も宜しくお願いします！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました！また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます！最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています！！ (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるなか | 作成日時：2021年11月26日 22時
