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第三十話 ページ32

恐る恐る目を開くと視界は闇に包まれていた。銃弾が軽やかな音を立て乍ら地面に転がり落ちる。
ふわりと漂う闇…否、其れは重力操作を受けた外套であった。
見覚えのある外套に守られていた。
外套を掴む手には手袋が。Aは振り向くと、そこにはずっとずっと待ち望んでいた中也の姿。

「迎えに来てやったぜ。感謝しろよ」

「中也さん…!」

中也の姿を見ては一気に緊張が解けたAは全身の力が抜け、中也の胸に飛び込んだ。
軽々と彼女の身を受け止めた中也はAが受けた傷を見付けると眉間に皺を寄せる。

「ねえ、中也さんが来る迄頑張ったよ」

「嗚呼、偉いな。もう休んでいいぞ」

そう呟きAの頭を撫でる手付きは子供をあやす親のように優しく、温かかった。

「やーっと来たのね、中原中也。何処で道草食ってたのよ」

「好き勝手云われちゃァ困るねえ、宇能サンよ。俺は薄々気付いていたぜ。初っ端からAを目立つ前線に立たせる事に何のメリットも見えねえ。此奴は体力も異能力もまだまだお子ちゃまだからな」

「え、ちょっと、張り切ってたんですけど」

「ふ、アタシを誘き出すための作戦だったってことね」

「そういうこった。まァ手前も一筋縄ではいかねえ異能力者ってことくらい知ってる。此奴の異能力が無ければの話だがな」

真っ赤に染まった首筋を指先でいやらしく撫でる。Aは「ヒッッッ」と色気の無い声を上げた。

「成程。直感で通じ合うこともあるのね。でも異能力ありきの関係なんでしょう?」

「どうだか。其れは嬢ちゃんの想像に任せるぜ」

「……はあ、癪に障る男ね」

吐き捨てるように呟く宇能は異能力を発動させる。先程とは比べ物にならない程の迫力。
その迫力の殆どは殺 気である。

中也は肩に掛けた外套を地面に敷くと、そこにAを優しく寝かせる。「直ぐに終わらせる」と柔らかな声音で囁き、額に一つ口付けをした。
立ち上がる中也の服の裾をAが掴んだ。

「中也さん、奴は手元にある銃を異能力で隠していたから、気を付けて」

「安心しとけ。俺の手に掛かりゃァ一瞬だ」

不敵の笑みを浮かべる中也に宇能の異能力が殴り掛かる。その攻撃を軽々と躱すと一気に距離を詰める。

「…ッ、」

「悪ィな。女を殴る趣味はねえが、手前は例外だ」

宇能の薄い腹に中也の重い拳が押し込まれる。其れに加え重力操作。彼女の身体は吹き飛ばされ壁に背中を打ち其の儘地面に倒れ込んだ。

「ほ、本当に一瞬だ…」

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- 時間があれば読み返しています!!とても魅力的な作品を読ませていただきました!! (2022年3月23日 22時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます!格好良さを全面に出したかったので良かったです〜!新作も宜しくお願いします! (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました!また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます!最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています!! (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるなか | 作成日時:2021年11月26日 22時

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