第十七話 ページ19
「え?それだけ?」
「後は人造異能生命体を造り上げた研究所についての詳細が書いてあるだけだ。」
「じゃあ抜け落ちた記憶は無いに等しいってこと?」
「……そういう事なんじゃねえの」
中也さんは気まずそうに視線を逸らす。
「じゃあ、こんな詰まらない存在の私をどうして買ったの…あんな大金積んで…」
俯き膝の上で震える拳を握る。中也さんはガジガジと頭を掻き大きな溜め息を吐いた。嗚呼、面倒臭い事云ってしまったなと後悔するが時すでに遅し。
「最初は、マフィアの利益の事を思って買った」
「……そっか」
所詮其の程度だったんだ。
そりゃそうだよね、何を期待していたんだろう
そう思えば目頭が熱くなる。視界がじんわりとぼやけて涙が溢れそうになった。
「ごめん、一寸独りにさせて」
「A、まだ話しの続きがある。最後まで聞け」
立ち上がった所を軽く肩を押されて椅子にもう一度座り直す。
泣いてるところなんて見られたくない。でも涙は止まることを知らなかった。
中也さんは私が泣いていることに気付いて優しく指で拭いとって呉れた。
「そういう優しい所に期待しちゃうんだよ…」
「期待したっていいだろ。その期待に応えられねェ男に見えるか?」
首を横に振る。
中也さんは私の顔を覗き込んで頭をぽんぽんと撫でては「いいか、よく聞け」と柔らかい声で囁いた。
「俺もな、手前と同じような生まれ方をした」
「え、中也さんも?」
「あァ、だから俺が引き取ったんだ。糞みてぇな環境からお前を掬い上げて幸せにしたいって思ったんだ」
「はは、何それ。プロポーズ?」
「そう受け取って呉れても構わねえよ」
な、なにそれ……理解が追いつかん。
見上げると、今迄に見た事ない中也さんの優しい微笑みが。
「なに、じゃあ私の一方通行だと思っていた好きって気持ちも救われるの?」
「何云ってんだ。俺はとっくにお前に惚れてるよ」
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椛 - 時間があれば読み返しています!!とても魅力的な作品を読ませていただきました!! (2022年3月23日 22時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます!格好良さを全面に出したかったので良かったです〜!新作も宜しくお願いします! (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました!また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます!最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています!! (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるなか | 作成日時:2021年11月26日 22時