第十五話 ページ17
「おや、Aちゃんじゃないか」
昼下がり。
喫茶店で先日の報告書を纏めていると長身の男に声を掛けられる。声の主の方を見ると、太宰さんがヒラヒラと手を振っていた。
「わっ、お久しぶりです」
「仕事中かい？偉いねえこんな気持ちいい天気の日に」
「太宰さんは仕事はどうしたんですか？」
「私？うーん……自 殺の名所の旅をしていた所だよ」
「サボりですか…と云うか趣味が物騒…」
どっこいしょと相席に座る太宰さんをじっとりと見詰める。首、腕に包帯。全く読めない表情。この人は一体何者なんだ…と思いながら再びPCに目を落とす。
「Aちゃん、前と表情が違うね。あの男のことを忘れる程のいい主人が出来たのかい？」
「う……今は中也さんが私の主人ですよ。と云うか、中也さんとどんな関係なんですか？」
「うーん。どんな関係、ねえ……」
太宰さんは綺麗な指を顎に添えて暫し黙る。男にしては整い過ぎである顔を眺めながらPCを閉じ、グラスに注がれたアイスティーを喉に流し込んだ。
「私、元マフィアなんだよね」
「は……？」
「びっくりした？」
「いや、え、は…？」
「其の時の相棒、と云ったら分かりやすいかな？」
思考が追いつかない。この人がマフィアだった？探偵社を白に喩えるならマフィアは黒。あまりにも相対的である組織に移行するなんて、
「太宰さん、本当に貴方は何者なんですか…」
「まァ、それはそのうち知っていってよ。其れより」
太宰さんの鳶色の瞳が私を捉える。
何だろう、見詰められているだけなのにこの威圧感。グラスを握る掌にじんわりと汗が流れる感覚。
「君の異能力…というか、生まれのことなんだけど。四年前の記憶がごっそり抜け落ちてるんだって？」
「はい…、太宰さんが何故それを？」
「私見たんだよね。マフィアに在籍している時に、君の情報を」
「えっ、じゃあその資料を見れば…」
「そう。君が何なのかが分かる。但し其の資料は極秘情報だからね、幹部だけ見ることが出来るんだけど」
「幹部、だけ…」
ということは、其の資料を中也さんが知っていれば……
中也さんに会いに行こう。この時間ならきっと任務にも出ていない筈だ。
そうと決まれば私は立ち上がり太宰さんを置いて店を出る。
やっと私の過去が分かる。
何故マフィアに辿り着いて中也さんに買われたのか。異能のこと、若しかしたら生まれのこともーーーーーーー
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椛 - 時間があれば読み返しています！！とても魅力的な作品を読ませていただきました！！ (2022年3月23日 22時) (
レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます！格好良さを全面に出したかったので良かったです〜！新作も宜しくお願いします！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました！また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます！最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています！！ (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるなか | 作成日時：2021年11月26日 22時
