第十四話 ページ16
嗚呼、やってしまった。
我儘なんて云う心算じゃなかったのに、起きたばかりの脳は思考力が著しく低下していた。
そしてこれだ。中也さんは電話口の部下に一言「切るぞ」とだけ云って端末を後部座席に放る。
「ひっ……」
「何だ。怯えた子供みてえな顔しやがって」
「だ、だって…私が勝手なこと言ったから…」
「それで？俺が迷惑つったか？」
「………云ってないです」
あれ？これ怒らせてない？
ちら、と中也さんの顔を見ると酷く余裕のない顔をしていた。
「はー……、もう限界だ」
中也さんは其れだけ吐き出すと私の頬に手を滑らせる。肩まで伸ばした髪をさらりと掻き上げ耳に掛けると、首筋にがぶりと噛み付かれた。
「え、」
「黙ってじっとしてろ」
ぎりぎりと鋭い歯が肌に食い込み痛みが伴う。このまま食べられるんじゃないかってくらい強く、強く噛まれた。噛まれた局所はじんわりと熱く火照りどくどくと全身に血液が巡る感覚がずっしりと伝わる。
中也さんから身を離し、急いでサンバイザーを下ろし鏡に自分の姿を映す。
「中也さん、本当に噛んでくれたの」
声が震える。首筋には噛まれた証拠に真っ赤な紋章のような模様が蛇のように這いずり肌を侵食していった。
「……嫌だったか」
「ううん。すごく嬉しい」
首に張り付いた印を優しく撫でる。ズキズキとまだ痛むが、其れでも心地良いと思えた。
「これで私は中也さんのものだね」
「ふは、何を今更」
「ご主人様って呼ぼうか？」
「生憎其の趣味はねえんだよな…」
ハンドルを握り直して中也さんは車を走らせる。
やっとこの関係に名前が出来た。
新たな主人が出来た高揚感に胸を躍らせていたが、心の奥底に見え隠れしていたもう一つの感情が残されていることに気付かず、後々これが大きな足枷になると云うことを未だ知らない
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椛 - 時間があれば読み返しています！！とても魅力的な作品を読ませていただきました！！ (2022年3月23日 22時) (
レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます！格好良さを全面に出したかったので良かったです〜！新作も宜しくお願いします！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました！また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます！最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています！！ (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるなか | 作成日時：2021年11月26日 22時
