序章 ページ1
闇の中に一筋の光が差し掛かり足元を明るくする。久々に見る白い光はとても眩しく、思わず目を窄めた。
光の方向から腕が伸び、私の手を掴んだ。
「ーーーーッ、痛っ」
鈍い音と共に地面に身体を打つ。土の匂いを感じ、ここが外だと気付いた。身を起こし土埃を払いながら次々にトラックから引き摺り出される仲間をぼんやりと見詰める。
―――私たちは売られるのだ。
生まれ育った家が貧乏であり、生計の為に仕方なく売られた子供。生きる術もなく奴 隷として生きる道を選んだ成人。そして稀に見る組織から野放しにされた異能力者。様々な人間が商人に買われ、より大きな組織に売り飛ばされている。
私もその1人だ。
「並べ。行くぞ。」
目の前には首を大きく曲げても先が見えない程の高いビルが聳え建っていた。重厚な扉が開く音がする。与えられた番号に従い、黒の背広を着た男について行きビルの中へ入れば、また同じように黒の背広を着た男が数人。私たちを見ては目を光らせていた。男が黒帽子の小柄な人に耳打ちをすると、その男は帽子の縁を傾け私を見た。
「14番。来い、」
「……え、」
指示通り動く。そうしなければならないのに突然の事に足が動かない。心臓の鼓動が激しくなる。握った手に汗がじんわりと滲んだ。
どうして?数多の組織で売れ残った私が。こうも簡単に呼ばれるなんて。
「有り得ない……」
「早くしろ!」
近くに居た男が私を蹴り飛ばす。体勢を崩し床に転んだ。
「おいおい。ちっとばかし売り物の扱いがぞんざいじゃねェか?」
頭上で帽子の男が喋る。膝を折り床に膝を突くと手袋をした手で私の頬を撫でた。
「……ふん。5億くらいか?」
「“中也様“此方は10億です」
「ふうん。意外に高ェのな」
顔を上げると帽子の男―――中也という男と目が合う。彼は目を細くさせて「ここまで苦労したな」と私の髪を撫で立ち上がった。
「この女買った。着いて来い、A」
「え、え…!?」
ええええぇえぇええええ!?!?
145人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
椛 - 時間があれば読み返しています!!とても魅力的な作品を読ませていただきました!! (2022年3月23日 22時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます!格好良さを全面に出したかったので良かったです〜!新作も宜しくお願いします! (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました!また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます!最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています!! (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はるなか | 作成日時:2021年11月26日 22時