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「…やだなあ、別に悩んでる訳じゃないですよ」
太宰「そう?それならいいけど」
にこにこと笑いながら、彼は珈琲を飲む。
…彼は、幸田A。
立派な成人男性だが、定職に就いておらず、言ってみればふらふらしている人間だ。
それでもこの人が魅力的に見えるのは、其の美しさのせいか。
「太宰さん、今日はお仕事は?」
太宰「…あー、国木田くんに押し付けてきた」
「またですか?今頃怒ってるんだろうな…」
くすくす笑いながら、彼は軽く頭を掻く。
…ふわりと、甘ったるい香りが鼻を抜けてゆく。
この香り、昔どこかで嗅いだことがある。
「…太宰さん?」
太宰「…Aくん、今君は誰のところにいるんだい?」
「え、?」
彼の真っ白な手を取って、そっと唇を寄せる。
…この香りを、私は知っている。
太宰「…君、ポートマフィア幹部の処にいるの?」
「……え?」
綺麗な瞳が、揺れる。
太宰「だとしたら直ぐに出てゆくべきだ。君の其の手は、」
「…ねえ太宰さん、」
優しく、指が絡められる。
その顔は、いたって真剣な表情だ。
「…俺は、太宰さんが思ってるよりも綺麗な人間じゃないよ。
生きるためなら何でもやるし、他人を踏み台にした事もある。…だからね、太宰さん」
太宰「…何?」
「俺の居場所を、奪わないで欲しい」
そう微笑んだ彼の表情は、…やけに美しかった。
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桐宮 - 素晴らしい作品でした。もう涙腺が…。 (2017年3月5日 21時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2017年1月5日 13時