【文スト】素敵帽子の居候【男主】 (ページ4)

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「中也さん、かゆいところないですか？」

中也「…ああ」

風呂場。

…何故こうなったかは、察して欲しい。

「いつも思うんですけど、中也さんの髪って柔らかいですよね」

中也「…そうか？」

「羨ましい限りです、…あ、流すんで目閉じてくださいね」

やたら優しい声が、耳元で響く。

言われるままに目を閉じながら、何となく此奴と会った時のことを思い出してみる。

確かあの夜は、雨の降る酷く寒い夜だったか。

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中也「…オイ、こんな処で何やってんだ手前」

「……え？」

貧民街近辺。

普段なら一切近づかないエリアだが、生憎今夜は仕事で用があった。

酷く雨の降る中、しゃがみ込んでいる彼に、俺は声を掛けた。

中也「その格好だと風邪ひくぞ」

「…俺のこと、？」

中也「…手前以外いねえだろ」

俺を見上げる其奴。

…やけに綺麗な目が、貫くように俺を見つめていた。

「あー…でも俺、帰る場所無いんで……」

中也「…手前、家事は出来るか」

「たぶん出来るけど…」

中也「立てよ、泊めてやる」

「…え、？」

黒い傘を其奴に傾ける。

しばらく不安げに俺を見ていたが、はっとしたように立ち上がる。

…濡れた服のせいか、やけに細い体型が露わになっていて。

身長は俺より高いが、体重はよっぽど軽いのだろう。

「おにーさん、どうして俺のこと拾う気になったの？」

中也「…さあな」

言える訳ねえだろ。

…あんな捨て犬みたいな目しやがるから、だなんて。

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