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「ねえ中也さん、」
中也「…何だ?」
「何であの時、…俺のことを拾ったの?」
中也「さあな」
「あ、またそうやって誤魔化す」
ムッとしながら、布団にくるまる其奴。
…本当に歳上なのか、此奴は。
「でも俺はね、嬉しかったよ」
中也「…そうか」
「俺さ、元は貧民街の出なんだ。…酷い目に遭ったことだってあった。
だからね、あの時声をかけてくれたの、本当に嬉しかった」
ふふ、と笑って、少し恥ずかしそうに俺に抱き着く。
可愛いと感じたのは、気のせいだと信じたい。
中也「…今更だが、手前はこれで良いのか?」
「中也さんが良いなら、何でもいいです」
中也「…ああ、そう」
その時、ふと電話が鳴る。
…着信音を聞いてる限りは、俺の携帯じゃない。
「…あ、電話かな。ちょっとすみません」
サイドテーブルに手を伸ばし、Aは携帯電話を取る。
…ちょっと待て。相手は誰だ?
携帯電話を与えたのは俺だから、他に登録してる奴なんて……
「あ、もしもし?…え、今?いや、忙しいです」
中也「おい、手前……」
「スピーカー?どうやる……あ」
『やっほー中也!昨夜はお楽しみってところかい?』
突然、携帯電話から嫌な声が聞こえてくる。
中也「は、はああ?!!」
「…ちょっと、耳元で叫ばないでくださいよ」
Aは困ったように眉をひそめながら、うつ伏せになって携帯電話の画面を見ている。
…いや、何故此奴があんな奴の番号を知ってるんだよ。
「太宰さん、また掛けますね」
中也「おい、二度と掛けるんじゃねえぞ」
太宰『やだやだ、怖いなあ』
プツンと通話が切れた瞬間、頬に何かが触れる。
奴の方を見ると、くすくす笑いながら口元を隠している。
「中也さん、もうちょっとだけ、ゆっくりしましょう?」
そう言う奴の表情は、やっぱり綺麗な微笑みで。
とやかく言おうとしていた口を閉じ、俺は其奴を強く抱き締めた。
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桐宮 - 素晴らしい作品でした。もう涙腺が…。 (2017年3月5日 21時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2017年1月5日 13時