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「あ、お帰りなさい中也さ…わ、すっごい血まみれじゃないですか」
ドアを開けるなり、驚いたように俺を出迎える彼。
…今夜はそのまま帰ってきてしまったから、無理もない。
そういや、こんな格好で此奴に会うのは初めてか。
手袋を外し、靴を脱いで部屋に上がる。
「とりあえず服脱いでください、洗いますから」
中也「…なあ」
「あ、怪我とかはしてないですか?」
中也「話を聞け、莫迦」
「え、何…っ、」
彼の、細い手首を掴む。
俺を見る奴の顔は、まだ驚いているらしい。
中也「…手前、怖がってんのか」
「俺が、中也さんを?」
中也「…ったく、俺は怪我なんざしてねえから。あと服は洗わなくていい。俺がやる」
「っでも、」
中也「そんな顔すんな」
かろうじて血のついていない帽子を、奴に被せる。
…まただ。
また、子犬みたいな顔しやがって。
「…じゃあ、お風呂沸かしてきますね」
中也「いや、今日はシャワーでいい」
「え、でも」
中也「飯は食ったか」
「?…食べましたけど、」
中也「先にシャワー浴びてもう寝ろ、いいな」
「でも、中也さんは」
中也「…A、」
名前を呼べば、彼は押し黙る。
中也「手前はもう寝てな、分かったか?」
「…うん」
優しく頬を撫でれば、少し穏やかな顔で奴は頷く。
子どもみてえだな、なんて。
「…本当に、怪我とかしてないですか?」
中也「ああ、安心しろ…っ」
ふわりと包まれるように、抱き締められる。
…もしかすると、此奴が毎日風呂に押し入ってくるのは、俺が怪我してないか確認するためか?
俺を抱き締めている此奴の体温が、やけに心地よく感じた。
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桐宮 - 素晴らしい作品でした。もう涙腺が…。 (2017年3月5日 21時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2017年1月5日 13時