＊ ページ5
「ここに居て…くれませんか…？」
恐る恐る首を傾げるその人の綺麗さに、
何も言えず大人しく椅子を引いた。
「店員さん、お名前は…？」
入れ直したホットミルクに手をつけず、
彼は首を傾げた。
「キム・Aです」
「キム・Aさん…ここで働いてるんです…よね」
何故か自信がなさそうな彼に、
また笑いそうになった。
「ここで働いてなきゃ、
私達2人共不法侵入で捕まりますよ」
私の返事に彼はそっかと眉を下げて笑った。
それで、と今度は私が問い返す。
「あなたのお名前は？」
少し躊躇うように俯いたその人に、
聞かないほうがよかったかな？と思った。
問いを撤回しようかと口を開く前に、
パッと顔を上げた彼と目が合って。
「ジュンです。ムン・ジュンフィ」
そう言って、少し眉を下げた彼はまた俯いた。
何だかどこかで聞いたことのあるような名前。
でもどこで聞いたかを思い出せなくて。
ま、いっか。なんて。
考えるのをやめた。
そこではた、と思った事があった。
「あの、おいくつですか…？」
雨に濡れていたその姿があまりに幼くて、
勝手にタメ口で喋っていたけど、
歳下である確証はない。
「96年生まれの21です…けど」
「同い年か！良かった〜」
ほっと胸を撫で下ろした私に、
彼は同い年なんだ〜と笑っている。
なんか…やっぱり幼く見える人だな。
「改めて、助けてくれてありがとう。
ホットミルクとか服も、ありがとうね」
笑う彼、ムンジュンフィさん…長いな。
ジュンさんはやはりどこか辛そうで。
聞かないほうがいいんだろうなと分かっていつつ、
顔に出てしまっていたらしい。
「気になるよね。やっぱり」
へへっとなんとも言えない笑いを浮かべ、
ジュンさんは少し考えてよし、と顔を上げた。
「僕ね。失恋するの！」
あまりにもはっきり。
それが当然なんだと言い聞かせるようなセリフ。
でもその顔はやっぱり辛そうで。
「それから逃げたかったんだ」
それ。
”それ“とは、きっと失恋の事。
逃げ出したくなるってことはその相手は身近な人で。
あぁ、似てるななんて。
「いいんじゃない？逃げても」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 171人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
１−−−−２ - ジョンハンの物語とジュンくんの物語どちらも面白くて気に入りました。ジョンハンくん編の更新待ってます！ (4月9日 3時) (
レス) id: 1a858c6117 (このIDを非表示/違反報告)
まるの(プロフ) - こんにちは！コメント失礼します！もとのお話から読ませていただきました！とても素敵なお話で、読む手が止まりませんでした…ジュンくんに幸せになってもらいたいです...！良ければ更新していただけるとうれしいです！！！ (1月27日 12時) (レス) @page25 id: 0f64c498bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Rui* | 作成日時：2021年9月15日 0時
