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2日目。




中堂はいきつけのカフェのドアの前に立っていた。


いつもより早く着きすぎたのだ。



カフェは既にオープンしているにもかかわらず、なかなか足が進まない。

若い店員が1人でいるのは危ない、店員の淹れる珈琲が早く飲みたかった……そんな理由を、たまたま朝早く目が覚めただけだという耐え前でグッと蓋をして扉に手をかける。

ドアを開けると、店の奥からパタパタと駆けてくる音がした。

中堂の顔を見るやいなや、満面の笑みで『いらっしゃいませ、お待ちしておりました』と迎えてくれた。

犬みたいだと思いながらも、彼女の笑顔を見ると不思議とホッと落ち着く気持ちになる。

『珈琲……お持ちしますね』

そう言ってまたパタパタと駆けて店の奥へ行ってしまった。




愛読書に集中できずにソワソワと彼女が来るのを待っていると、歩いてくる音がして慌てて本に目をもどす。

『お待たせしました』

コトっと少し音をならせて、珈琲が中堂の前に置かれる。

置かれたものは、いつもの珈琲とは違いレモンが浮いている。

困惑気味に彼女を見れば、さっきと同じように満面の笑みで、中堂が飲むのを催促しているようだ。

戸惑いながらも一口。

「…………」

『…………』

「レモン。」

『はい、レモンを入れてみました。』

浮かんでいるレモンをみていると

『あっ……レモンお嫌いでしたか……?』

しまったと言うような顔をして、不安気に中堂を見つめる。

「いや、嫌いじゃない。案外飲みやすいんだな。」

『……!そうなんです。昨日、苦いって仰られていたので、苦味を緩和するレモンを入れたんです。それに、夜遅くまでお仕事されてるんだろうなと思って、朝スッキリできるような珈琲をお出ししました。レモンには疲労回復効果もありますし……今日のお仕事も頑張ってもらえたらなぁ〜なんて』

ニコニコしゃべる彼女をじっと見詰めていると、『あ、喋りすぎましたよね。すみません』と恥ずかしそうに謝罪するものだから、何か言わなければという使命感にかられた。

「いや…………………………うまい」

中堂は精一杯の気持ちを伝えたつもりだが、普通にしていても感じが悪いだのパワハラだの言われるのだから少々不安になる。

しかしその不安は彼女の笑顔が拭ってくれた。

『あ、ありがとうございます!ごゆっくりお寛ぎください。』






その日のUDIラボにて。

神倉「中堂さん、今日機嫌いいねぇ」

中堂「……」

神倉「あ、戻った」

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みく(プロフ) - 星野将希さん» はじめまして。コメント及びご指摘ありがとうございます。気を付けてはいたのですが変換ミスしていました……。なるべく誤字がないよう努めてまいりますので、宜しければこれからもよろしくお願い致します。 (2018年2月23日 20時) (レス) id: d43cb19d57 (このIDを非表示/違反報告)
星野将希(プロフ) - はじめまして。いつも楽しく読ませていただいてます。突然ですが、水澄の「み」は「水」ではなく「三」だと思うのですが…。作者様のあえてなら失礼いたしました。更新頑張ってください。 (2018年2月23日 19時) (携帯から) (レス) id: 2e2dbe8a41 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みく | 作成日時:2018年2月21日 4時

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