02 ページ2
お店の中にコーヒーの良い香りが広がり、朝の気だるい空気を包み込んで優しく起こしてくれるようだ。
この時間が私の至福のひとときでもある。チラッと彼を見れば、椅子に浅く座り背凭れに寄り掛かって黙々と本を読んでいた。
前来た時も同じ服着てたなぁ。何読んでるんだろう。手綺麗だな。あ、爪短い。あんなに前髪伸ばしてて本当に読めてるんだろ――
『ぁ……』
彼とバチッと目が合ってしまった。
まずい。
ずっと見てたって思われるかな。いや、見てたんだけど。どうしよう。もしかして珈琲が遅いとか？確かに遅いような…もう、マスター早くして〜！
そんな焦りも知らず、彼はそのまま本に目を戻し何事も無かったかのようにまた黙々と本を読み始めたのだった。
すると横からバイトの女の子がグイグイと肘をおしやってくる。
小声で何？と聞き返し、顔を近づける。
「今目が合っちゃいました……きゃ〜どうしよ〜」
「ぇ……あ〜そっか、よかったね〜」
私じゃなかった。よかった。変な汗かいたじゃない。
なんてホッとしつつ、横で「昨日髪の毛切ったからかなぁ。あ！制服が可愛いとか？」とコソコソ話してくるのを、うんうんと頷いていると
「Aさん」
マスターが私を呼ぶ。ようやく珈琲が出来たようだ。
マスターの作るコーヒーは美味しい。作る時間は普通より倍もかかるけれど、その分香りも味も深みがある。って誰かが言ってた。
豆はマスターが何種類もある中から選び、珈琲の淹れ方にもこだわりがある。
私も昔やらせてもらった時は、豆の挽き方から違うと言われたものだ。
『あれ？セットでしたっけ？』
彼が頼んだのは珈琲のみ。
マスターの手元のお盆には、できたてのトーストにバター、そしてサラダが乗った珈琲セットがあっま。
「私達の朝ごはんを作るついでだよ。ほら、君たちも食べるといい。」
美味しく焼けたんだ。と皺のある顔にさらに皺を作ってニコリと笑い、お盆を渡された。
「お代はいらないと伝えておくれ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みく(プロフ) - 星野将希さん» はじめまして。コメント及びご指摘ありがとうございます。気を付けてはいたのですが変換ミスしていました……。なるべく誤字がないよう努めてまいりますので、宜しければこれからもよろしくお願い致します。 (2018年2月23日 20時) (
レス) id: d43cb19d57 (このIDを非表示/違反報告)
星野将希(プロフ) - はじめまして。いつも楽しく読ませていただいてます。突然ですが、水澄の｢み｣は｢水｣ではなく｢三｣だと思うのですが…。作者様のあえてなら失礼いたしました。更新頑張ってください。 (2018年2月23日 19時) (携帯から) (レス) id: 2e2dbe8a41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みく | 作成日時：2018年2月21日 4時
