烏の喜び 1 OPEN ページ23
「……あ？何で姉ちゃん一人なの？」
『お、スンチョルじゃん。お疲れ〜』
「……いや、お疲れ〜じゃなくて。……え、ヌナは？」
『チャンとご飯行ったよ〜』
「……………」
え、何も聞いてないんだけど。
え、一言くれても良くない？
俺の右手にぶら下がったパイ生地のシュークリームは残念ながら出番が無くなってしまったようだ。
折角、買ってきたのにさ。パイ生地のシュークリーム好きだって言ってたから買ってきたのにさ。ヌナの為に買ってきたのにさ。
「……弁当ちょうだい」
『……もぅ〜、そんな不貞腐れないのっ！たまにはいいじゃん？ほら、今日は私が一緒に弁当食べてあげるからさ？』
「いらねーよ」
そう言って簡易階段を引っ張り出してドカッと乱暴に座ると簡易階段が少し悲鳴を上げた。
いや、別に良いんだよ？飯食いに行くのはさ？ただ、それを先に報告はして欲しいよね。そしたら俺だってシュークリーム買わなかったしさ？
……つか、まずどうすんだよ。このシュークリーム。一個余るじゃん？
『ねぇ、その袋なに？』
「え？あぁ、シュークリーム」
『私へのお土産？』
「は？んな訳」
そう鼻で笑うと少しムスッとした顔の姉ちゃんはそのまま呆れたように背中を向けると唐揚げを揚げ始めてしまった。
あげても良かったのにあげなかったのは、やっぱりヌナに食べて欲しいから。このシュークリーム食べるとめちゃくちゃ可愛い顔すんだよなぁ、あの人。
きっと彼女が帰ってきたら出番がやってくるであろうシュークリームの袋を握り締めながら弁当を待つ事10分。
食べて行かないの？なんて声をかける姉ちゃんに首を横に振って家までの道を歩いていくといつも隣にいるはずの彼女の姿が無くて少しだけ虚しさを感じた。
あーぁ、今横にいたらヌナはスキップするような勢いで家へと帰ってるかもしんねぇなぁ、
そんな姿まで想像出来てしまうほど側にいた俺達にとって、別々に家へと帰るのはほぼ初めてだった事をこの時思い出した。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月27日 21時
