鴉の羽ばたき 1 OPEN ページ19
"………お母さん、元気かなぁ?"
キッカケは姉ちゃんのその一言だった。
姉ちゃんの出費は無くなり自分の財布にかなりの余裕が出来てヌナと姉ちゃんがいるキッチンカーへ唐揚げ弁当を買いに行く回数が増えて来た頃。
ヌナは姉ちゃんにキッチンカーの留守番を頼んで買い物へ行ってしまい、俺とスンチョルさんの特等席になったキッチンカー裏の簡易階段に座りながらお弁当を食べていると姉ちゃんがポツリと呟いた一言、
少し、息を呑んだんだ。
「……何で?母さんが気になるの?」
『うーん、気になるっていうか、ただ元気なのかなぁ?って』
「ふぅん、……まぁ、何とかやってんじゃない?」
『料理もお洗濯も掃除も、しっかりやってるといいねぇ?』
「………………」
そう言って笑顔で話す姉ちゃんは自分がされて来た事を忘れてしまったのだろうか?
側からみると母親を心配する娘のような姿に姉ちゃんは何だかんだ言いながら母さんを忘れられていないのかも知れない、そう思った。
…………だから、こんな事聞いてしまったのかな?
「………会いたい?」
『へ?』
「………母さんに、」
『………………』
黙り込んだ姉ちゃんに、しまった、そんな事を思ったんだ。
姉ちゃんは物心がついた頃から邪険に扱われていて愛情なんて注がれちゃいない。虐待し続けた母親に会いたい子供なんていないに決まってる、
「……あ、いや、そんな訳無いよね、ごめん。何か姉ちゃんが元気かな?なんて言うからちょっと勘違いしちゃって、」
苦笑いになりながら姉ちゃんへと声をかけると姉ちゃんから返ってきた言葉は予想もしていない答えだった。
『会ってみたいかも、』
「え、」
『今ならね?お母さんに会っても自分に自信を持ってるから何でも言えちゃいそう!私、こんなに綺麗になったんだよ!とか、こんな私がお仕事してるんだよ!とかっ!』
「……………」
そう言って自信に満ち溢れた笑顔を溢しながら話す姉ちゃんの顔はとてもキラキラしていた。今の生活が本当に楽しいんだろう。
………すごいよなぁ、ヌナとスンチョルさんマジック。
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作者名:ノルン | 作成日時:2024年2月27日 21時