ハイドくんとシークちゃん 3 OPEN ページ17
チキンを箸で掴みゆっくりと目の前に持って来たハンソル君は笑えていない顔で私へと告げた
「………美味しそう、だね」
『……………』
「……い、いた、頂きます、」
そう言って痙攣しているのでは無いか？と思うほど手を震わせながら口元へとチキンを運んでいくハンソル君の手を思わず掴んでしまった
「あ、………え、？」
『あの、ハンソル君……もしかして、……』
「……………」
『ピーナッツバター、苦手だった？』
「………あ、えっと、」
エスニック料理が好きなハンソル君だ。ナンプラーが苦手な訳がない。なんなら、ガパオライス好きだったし。
………と、なると口にしなかった理由は一つしか無い。
『……もしかして、ピーナッツバターが苦手だからずっと食べなかったの？』
「……………」
『……もうっ！そうならそう言ってくれれば良いでしょう？どうして無理に食べようとするの？』
「……だ、だってAちゃんが嬉しそうだったから、」
『えぇ？』
ハンソル君はチキンをお弁当の中に戻すと目線を下げて俯いたまま小さい声でポツリと呟いた。
「Aちゃんが俺がエスニック好きなの知ってるのが嬉しかったし、何よりも俺の事考えながら作ってくれたから何だか言い出せなくて、」
『……………』
「……それに、食べなかったら傷ついちゃうかな、って、」
『……もぉ、馬鹿だなぁ、』
ハンソル君のほっぺに人差し指を突き刺すと私の方をチラリと見たハンソル君の顔はすごく申し訳無さそうだ。
……あなたは私に思った事を言って、なんて言ったくせにあなたは私に思った事を言ってくれない訳？
『……ハンソル君が言ったんでしょ？"嫌な事は嫌だって言って良いんだよ"って、……そんな事で嫌う人なんていないんだから、って』
「……………」
『私には思った事を言わせるのにハンソル君は言ってくれないの？……何か信用されてないみたいで悲しいなぁ』
「あ、いや、そんなんじゃっ、」
『ふふっ！分かってるよ！』
そう伝えると肩を落としたハンソル君は少し悲しそうな顔をしたまま弁当を見つめ続けてしまった。
そんな彼の肩をポンポン、と叩くと私に視線を向けて笑ったハンソル君は少し困ったような顔をしているけど何とかいつもの笑顔に取り戻したようだった。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月27日 21時
