悪役ヒロインのValentine 1🍫 ページ1
『……これ、あげる』
「………何コレ」
『あー、何か、チョコ』
「何かチョコ」
『何か、そこにあった』
「何かそこにあった」
あぁ、ヤバい。ちょっと恥ずかしいかも。つーか、何袋見つめたままでいるんだよ、早く取れっつーの
私の言った言葉を繰り返しながら袋を見つめているジスは中々袋を受け取らず側から見ればチョコレートを受け取られるのを待っている私、という構図が出来上がっているはずだ。
何でこんな恥ずかしい状態のまま私は放置されなきゃいけないんだよ、早く取れよ、何だよお前。
「……あのさ、聞きにくいんだけど、バレンタインでくれてるんだよね？」
『逆にどう見えてる訳？』
「……あの、言ってなかったっけ？」
『何を』
「……俺、食えないんだよね。チョコ」
『……………』
聞いてねーよ、何なんだよお前、もう死ねよ。
「昔からチョコ貰いすぎてチョコを見たらもう吐き気が出ちゃうんだよね」
『……………』
「だから、毎年断ってるんだよ。吐きそうだから。逆に何で知らなかったの？」
知らねーよ、何なんだよお前、もう死ねよ。
『あっそ、じゃいいや』
「あっ、ちょっ、」
勘弁してくれよ、この藻屑男が。食べれない？なら前もってそれとなく伝えておけよ。私が準備するとか考えなかった訳？
ただ、何とも言えない気持ちになってしまった。
あんなにも申し訳なさそうにしたジスを見たのは初めてだった。きっと、本当に食べられないんだろう。見てしまうと吐きそうになるんだろう。
頑張って準備した手作りの生チョコはきっと私の口の中に消えてしまうのだろう。食べれないなんて言われたら仕方ない。どうする事も出来ないんだから。
……ただ、少しだけ悲しい気持ちが湧き上がった。
そんな気持ちのまま廊下を歩き続けていると私の目の前から見覚えのある男が歩いてきた。ジョンハンじゃないか。
ジョンハンは私に気がつくと片手を上げて爽やかな笑顔を見せた。
ジョンハンにあげよう。友チョコになるだろ。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月14日 19時
