7 Cits ページ9
「お客さんの接客をしたり、って言ってましたよね？」
『へ？うん、まぁウチは接客業だからねぇ、』
「それって、会計とかもしなきゃいけないですよね？……算数が出来ないと、駄目ですよね？」
『は？……さ、算数？』
算数、なんて言ってもウチは唐揚げ弁当しか販売していないから700円の弁当と個数を計算するだけだ。算数にも値するのか、ってレベルだけど
『……いや、算数なんて言っても、700円の弁当と個数を計算するだけだから数字なんてパッと出てくるし、』
「そう、ですよね。普通なら算数っていう言葉の中にすら入らない分類の計算になりますもんね、簡単すぎて、」
『……………』
そう言って苦笑いしたチャン君は何かを誤魔化すように笑いながら頭を掻いている。
『……バイトをしてるのに、仕事内容を聞いてくるって事は雇って欲しい人でもいるの？』
「あ………」
『……ふふっ、良かったらその人のお話聞かせてくれない？』
「あ、えっと………」
少し口篭るチャン君は話して良いのか迷っているのかな？算数をしなきゃ駄目か？なんて聞いて来ているんだからもしかしたら数字が苦手な子なのかもしれない
『……ウチは個人店だからさ？融通は聞きやすいと思うよ？』
「………そう、ですよね」
『うん、お相手の人もウチで良いって言うなら話を聞いてみたいなぁ』
「………あの、話が長くなるんです」
『ん？うん』
「……少し、お話ししてもいいですか？」
そう言って俯いてしまったチャン君の姿はどこか小さい子供のように見えてしまって菜箸を持っていた手が止まってしまった
いつもあんなに明るくて笑顔で話すチャン君のそんな姿を初めて見た私はなるべく安心して貰えるように彼に声をかけた
『どれだけ長くなっても大丈夫だよ？話してみて？』
「………はいっ、」
両手が少し震えているチャン君の口から発されていく言葉は私の理解を遥かに超えてしまう出来事で話し続ける彼の姿が痛々しくて思わず目を逸らしてしまった
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
