32 Cits ページ34
"ごめんね、チャン"
聞かれた、聞かれてしまった。一番聞かれちゃいけなかったはずなのに。
今まで長い年月をかけて積み上げた努力が一瞬にして崩れ去ったんだ。
『……チャン君？』
「……………」
聞こえたAさんの声は優しくて気を抜くと零れ落ちそうだったんだ、だから頑張って止めていたのに、
『お姉さんが心配？』
「……………」
『そうだよね？でも、大丈夫だからね？安心していいよ』
そう言って俺の頭に手を添えたAさんは自らの肩に俺を引き寄せて目元を肩へと押し付けた。
辞めてくれよ、まず俺はAさんに何も言っていないでしょ？どうして分かってるとでも言うように話し続けるんだよ
………俺はそんなに優しい人間なんかじゃ無いんだ。
目から無限に溢れ出る物は止める事も出来ずに声を押し殺しながらAさんの肩を濡らし続けた。
『……お姉さんを思って泣いている子が優しく無い訳ないでしょう？』
「………っ」
『お姉さんを思って高いお金を出して唐揚げ弁当を買って、お姉さんを思って服を買う子が優しく無い訳……ないでしょ？』
「……Aさ、」
優しく宥めるように聞こえる声に頭によぎったのは姉ちゃんの無事だけだった
『チャン君は、何もおかしい事を感じてなんか無いよ。』
「……っ、」
『誰もが追い詰められて当たり前なの。それでも、チャン君は一生懸命お姉さんを支え続けた。』
「…………俺、」
『あなたは、すごく立派だよ。その思いは必ずお姉さんに届いてるはずだから。』
俺を体から離して両頬を包み涙を拭ったAさんは俺の頭を撫でて微笑みながら口を開いた
『……お腹、空いたでしょ？唐揚げ弁当持って帰って家で食べて？お姉さんは必ず家に送り届けるから』
そう言ってくれたAさんの言葉に少し笑って首を横に振った
「……いえ、帰れません、」
『え？』
「……姉ちゃんの事だ。俺に気を遣って家にいてもきっと家の中を自由に移動しない」
『…………』
「……そうなると、どうなるか分かりますか？」
お腹が空いても俺に顔を合わせない為にベランダに出たまま家の中へ入ってこないだろう。きっと、俺がまた唐揚げ弁当を買ってきてもきっと食べてくれない。自嘲気味な笑いが溢れた
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
