31 Cits ページ33
そう言って彼女は俺に背中を向けた。
このままだと本当に彼女は消えてしまう。そう思うと動いた足は彼女を追いかけて背中から彼女を抱き止めると彼女の足はピタリと止まった。
あぁ、今日会ったばかりの女性に何て事してるんだ、俺は
「……女でしか稼げない方法、って、何をしようとしてるんだよ」
『……母に昔言われた事を実践してみようかと、』
「……そんな事、言われたの？」
『……何をしようとしているのか、分かるんですか？』
「………そんなん、一つしか、無いから」
そっか、ポツリと呟いた彼女はそのまま俯いてしまった
「……俺は、そんな金の稼ぎ方はオススメ出来ないよ」
『でも、知識も何も無い私が唯一出来るお金の貰い方だと思うんです』
「姉ちゃんの店はどうすんだよ？」
『もう行かない。私がいたらチャンが唐揚げ弁当を食べれなくなります。もう私は、あの子から何も取り上げたくない』
「……………」
『お話は……もういいですか？私、行かないと』
行く？どこに？本気で行くつもりなのか？
「君は知ってるか分からないけどさ、売れる女と売れない女がいるんだよ」
『え？』
「そんな色気も無い服を着て、髪も不揃いで、メイクもしていない君を買ってくれる人はいるかな？」
『…………』
「きっと、誰も買ってくれないよ。………だから、それなら俺が買ってあげる」
『は？』
気の抜けた声が出た彼女は驚いたのかこちらの方へと顔を向けた。思わず漏れ出た溜め息に項垂れそうになってしまった。
何で俺がこんな事を。ふざけんな、給料日前だし高給取りでも無いんだぞ
彼女に回していた腕を離して彼女の手をそっと包み込むと女性特有の柔らかい手はそこになくてあるのは少し骨張った小さい手だ。
「おいで、俺ん家行くよ」
『……はい』
そう言って大人しく引っ張られていく彼女の手を握りしめながら自分の家へと向かっていった。
『懐かしいな、チャンにもこんな風に手を引っ張られました』
「……呑気だね」
『呑気、ですかね？でも、知ってる人で良かった。……スンチョルさんで良かった』
「……………」
本当だよ、俺じゃ無かったらどうなってたと思ってんだよ
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
