30 Cits ページ32
"……姉ちゃんなんかっ、いなくなればいいのに、って！！"
響き渡ったチャンの悲痛な叫び声。
特に悲しいとか辛いとか、そういう感情は湧き上がらなかった。
そりゃ、そうだよね？って、
自分の生活を乱し続けている存在がいればそう思っちゃうよね？って。ただ、それだけだった。
「……待って、！」
『あ、スンチョルさん、』
私の腕を掴んでグイッと引っ張ったスンチョルさんへと振り返ると、スンチョルさんは私から目を逸らして俯いてしまい長いまつ毛を揺らしながら必死に言葉を紡ごうとしている。
『私はチャンに甘えすぎていたのかも知れないですね』
「えっ、」
『私が生きている事でチャンを縛り続けている、そんな事分かっていたのに私は生き続けたい、そう思ってチャンに負担を与えすぎていたのかも知れない』
「…………」
『とっくの昔に壊れていたんですね、チャンの心は』
「………あ、の、えっと、」
しどろもどろになったスンチョルさんは心配してくれているんだろう。あなたもチャンのように優しい人だから。
いなくなればいい、そう思っているのに私を助け続けるチャンのように心温かい人だろうから、あなたも。
『手を、離して下さい』
「……離して、どこに行くんだよ」
『………分からない、……どこに、行こうかなぁ？』
「…………….」
もう、あの家には帰らない。そうすればチャンは私の姿を見なくて済むから自分のやりたい事をやれるはずだ。
幸い母も私に興味など無い。私がいなくなった所で何も思わないだろう。世間一般では私は大人の分類だ。この身一つあればちっぽけな頭でも生き方を見出せるだろう。
『離して下さい。私、生きていかなきゃ』
「い、生きていく、って、……どうやって、」
どうやって？そんなの簡単じゃない。この身があれば
『私は、女です。スンチョルさん』
「は？そんなん分かって、」
『女でしか稼げない方法も沢山あると思います。』
「は、……え、？」
『私、女で良かった』
そう呟くと、口をポカンと開きながら固まっているスンチョルさんの手をそっと離れさせると簡単に離れたその手から私の手を離した
『ありがとう、スンチョルさん』
「…………」
『短い時間だったけど、楽しかったです』
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
