28 Cits ページ30
『げっ、……幻想？』
俯いたチャン君を見つめながら首を傾げて聞いてみると顔を上げたチャン君の顔は少し遠い目をしたまま呟いた
「小学生の時は、食事なんて言えないような物しか食べれない姉を見て栄養を心配して自分の小遣いを削り続けて来ました。
その結果、遊ぶ金の無い俺は段々と友達から遊びに誘われなくなってしまった。」
『…………』
「やっとバイトが出来るようになって、母に頼み込んでバイトを始めた瞬間に思ったのは、やっと自分の物が買える。自分で働いて稼いだ金を自分に使える。そう思った」
『…………』
「でも、目に入るのは姉の存在。未だにマシな食事をまともに食べられない姉を見ていられなくて、ご飯を買いました。
金に余裕が出来た俺が次に目に入ったのは薄汚れた姉の服。次は服を買いました。
次に目に入ったのは月経が毎月くる姉。いつも具合が悪そうな姉に買ったのは薬と………生理用品。店員に変な目で見られた」
『…………』
「……働ける日数を母から決められた俺の初めての少ない給料は全て消えてしまった………姉のせいで、」
『……チャンく、』
手をワナワナと震わせながら話すチャン君の姿に思わず目を逸らしてしまいそうになった。………駄目だ、逸らしちゃ駄目だ。
……今の彼の姿をしっかりと見つめておかなければ、
「最初は母に憎しみの念を向けていました。………でもいつからか、その矛先は変わっていった」
『………っ、』
「どうして俺が姉の面倒を見なきゃいけないんだ、って」
俯いたまま声を震わせて話すチャン君の姿が痛々しい。
「……姉ちゃん、何で産まれてきたの？そう思った」
息を震わせながら吐いたチャン君の言葉は残酷で逸らしちゃいけないと決めていた視線は地面へと向いてしまった
『……………』
「でも、そんな姉を見捨てる事が出来ない。だってたった世界で一人の血の繋がった姉なんだから、見捨てるなんて出来る訳ない」
『…………』
「そんな気持ちもあるはずなのに、どうして産まれたの、なんて思った自分に絶望を感じました」
『……チャン君、あの、』
何て、声をかければいいのだろうか？地面に向いたままの視線は泳ぎ回りこれ以上言葉を発せない。
そんな私を見て私の両肩を掴んだチャン君は声を張り上げながら私に問い詰めた
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
