25 Cits ページ27
『……スンチョルさんっ、唐揚げが温かいよぉ……っ、』
「うん」
『温かい唐揚げってこんなにも柔らかいんだねっ、唐揚げからたくさん汁が出てくるよっ、』
「あぁ、肉汁？めっちゃ美味しいでしょ？」
『……肉汁、美味しいねぇ、』
「はははっ！肉汁美味いはあんまり聞いた事無いなぁっ！」
そう言って笑うスンチョルさんに構わず差し出されたままの唐揚げにまた齧りついて一つ丸ごと食べてしまうと次は白ご飯を差し出された
「温かい白ご飯は温かい唐揚げと相性が抜群なんだぞ〜？」
そう言われて箸に掬われた温かい白ご飯に向かってまた齧りつくと口の中で味わった事の無い風味が広がった
温かい白ご飯と温かい唐揚げってこんなにも素晴らしいっていうの？
『美味しいねぇ、スンチョルさんっ、』
「そうだろ？ほら、弁当の蓋開けて？」
『うんっ、！』
弁当の蓋を開けて無我夢中で口の中へ放り込み続けた。
食事ってこんなに美味しいって感じる事が出来るんだな。次の一口までの時間が楽しみで仕方ない。
『食事って楽しいんですねっ、スンチョルさんっ、』
「美味しい物食べると楽しいだろ？他に好きな食い物無いの？」
『好きな食べ物………？うーん、何だろ？ご飯は作れますが、食べた事が無いので……あっ！でもチヂミのタレは美味しかったっ！！』
「チ、チヂミの……タレ？」
『はいっ！冷たいご飯とチヂミのタレを食べたんです！ご飯にすごく合ってて美味しかったですっ！……きっと、温かいご飯との相性も抜群なんだろうなぁ、』
そう伝えると苦笑いをしたスンチョルさんは項垂れたように頭を下げると、小さい声でハハッ、と笑った
「……今度、チヂミ食べに行こうか？多分感動するよ」
『本当ですかっ！？』
「うん、ついでにチヂミのタレの使い方も教えてあげる。多分、ビックリするよ？」
『えっ、チヂミのタレの使い方？』
「………まず、温かいご飯にかける事なんて無いよ」
『えっ、』
「チヂミと一緒に他の美味いもんも食わせてやるからさ」
そう言って私の頭に手を乗せたスンチョルさんに大きく頷くと優しく微笑んで頷いてくれた。
スンチョルさんのそんな顔が見れたなら、生きてて良かった、なんて少しだけ思えてしまった
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
