24 Cits ページ26
『きっと、私はこんなに美味しいご飯を食べてしまったら、元の生活に戻れなくなってしまう』
「……………」
『人間って欲張りですよね？だって、このご飯が世間一般では普通だと言うのに私は食べられなかった。
その普通のご飯が目の前にあるんですよ？私はこの"普通のご飯"を食べれば、母や弟から与えられるご飯に満足出来なくなる気がします』
「……………」
『私にはこんなにも温かい白ご飯よりも冷たいご飯の方がお似合いなんですよ。弟からの唐揚げ弁当ですら贅沢だと感じたのに、それ以上の、贅沢なんて、私には、』
「……………」
『…………でも、もっと早く食べてみたかったなぁ、温かいご飯』
どうして、私は俗に言う"普通"を味わえないんだろうか？弟がくれる前のご飯は、あのカピカピのご飯と炒め物をした後の残った汁だけの生活だったのに。
そんな私を見て栄養を心配したチャンは小学生の時から自分のお小遣いを使って1つ50円の冷めたコロッケと小さいキャベツをよく買ってきてくれた
私からすればそれが普通だったのに。こんな唐揚げ弁当を食べてしまったら私の食生活は一体何だったんだと思ってしまうじゃない。
…………人間以下のご飯を与え続けられていたのでは無いか？それを分からされてしまうじゃない。
もし、人間以下のご飯を与えられていたのなら、私は何の為に生きているのか分からなくなるじゃない
膜が張って目の前が滲んで唐揚げ弁当がその膜で見えなくなってきた頃に私の目の前に茶色い物体が現れた
『………え、』
「……食ってみ？馬鹿美味いから」
思わず顔を上げてスンチョルさんを見るとニコニコと笑ったまま私に唐揚げを差し出している。顔を上げた拍子に目から零れ落ちた水滴は蓋をしている唐揚げ弁当に落ちてしまった
「君の中の"普通のご飯"、上書きしようよ」
『……は、？』
「食べたくなったら、助けてくれる奴は弟君以外に増えただろ？」
『……………』
「今では、弟君以外に姉ちゃんもいる。………もちろん俺も、」
『……………』
「感動する程の美味しいもん、腹がはち切れる位まで食い尽くしちゃおうよ」
『う、ん………っ！』
目の前にある茶色い物体に目掛けて大きい口を開け齧りつくと止まっていた涙はまたボロボロと流れ出してしまった。
………何なの？コレ、本当にいつも食べてた唐揚げなの？
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
