23 Cits ページ25
私が普通だと思っていたあの冷たいご飯は一体何だったんだろう？母から与えられるご飯はあの冷たいご飯よりも酷かったのに。
こんなにも白くなくて少し黄色がかりながら食べるあのご飯はとても冷たくてカピカピになってしまっていたのに。所々ガリッという音が鳴るあのご飯はこんなにも美味しくない。
チャンが与えてくれたあの唐揚げ弁当の白ご飯を食べた時ですら感動したんだよ？冷たいけど硬いところが無い、って。ご飯が白い、って。…………なのに、それなのに、
それを上回る白ご飯に出逢ってしまうなんて、
『スンチョル、さん……』
「……ん？」
『スンチョルさんからすれば、この白ご飯が"普通"ですか？』
「……………」
スンチョルさんへと視線を向けると彼は前を真っ直ぐ向いたまま口をモグモグと動かし続けている。
さも当たり前かのように食べているその姿に、きっとこれが俗に言う"普通"と言う物なんだろうな、そんな事を思ってしまった
「……うん、そうだね」
『……ふふっ、こんなに温かくて、柔らかくて、箸を刺さなくていいご飯が普通なんですね』
「……………」
『私の普通は、冷たくてカピカピになってこんなに柔らかく無いのに。箸を刺さないと一口分掬えないのに』
「……………」
こんな温かくて柔らかいご飯を食べてしまえば、きっと私は……………、
ごめんなさい、オーナーさん、
横に置いてあったお弁当の蓋を取って弁当へと被せてベンチの横に置くと私の行動を見て口の動きが止まってしまったスンチョルさん
「………え、何してんの？」
『一度、冷まそうかと思いまして』
「はぁ？」
私の言った事に顰め面をしたスンチョルさんは驚いたように声を上げた。こんなにも温かい白ご飯なんて私には贅沢だ。次にいつ食べられるかも分からないのに。
『すごく美味しいんですね？温かい白ご飯って。私の知ってる白ご飯とは桁違いです。』
「……だ、だったら食えばいいだろ？」
『……いえ、だからこそ、食べれないんです』
「………はぁ？」
だって、こんなにも美味しい桁違いの白ご飯を食べてしまったら私はあの冷たいご飯を食べられなくなってしまうじゃない。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
