17 Cits ページ19
「あ、あの〜、聞いて良いか分かんないんだけど、……あ、えっと、言いたくなかったら言わなくて良いんだけどさ？」
『はい』
「その〜、義務教育受けてないってのは……中学……中学校の話、だよね？……さ、さすがに、小学校は行ってる、……よね？」
『………いえ、小学校も一度も行った事はありません』
「あーーーー、うん、そうだよね」
そりゃあそうだろ、何て事を聞いているんだ、俺は。東西南北なんか小学校で習うだろうが、馬鹿かよ、俺は。
「あー、えっと、行けなかったのは、働けない家族がいて行けなかったの？ほら、行けない理由って色々ある、じゃん？」
『母に嫌われていたから、それだけです』
「は？嫌わ……、は？」
母に嫌われる？それだけ？
え、それってそれだけなの？つか娘を嫌う母親なんているのか？両親から愛されて育った俺と姉ちゃんからすればそんな話、信じられる訳がなかった。
でも、嘘をついているようには見えない。大体、そんな嘘つく必要がどこにあるんだって話だ
『私が女だったから。』
「え、女？」
『息子が欲しかったみたいです、母は』
「へ、？」
『なので、存在を否定されました。お前はどうして息子じゃかったんだ、と。』
「む、むす………、」
『3年後に産まれた私の弟は私の分の愛情も注ぎ込まれました』
「え、お、弟がいるの？、」
『はい、……弟が今のオーナーさんのお店を見つけて来てくれたんです』
弟が姉ちゃんの店を見つけて来た？……って事は、姉ちゃんと彼女の弟は元々知り合いって事？
「オーナーさんの唐揚げ弁当だけが、私の命を繋ぎ続けてくれた」
『え、』
「食事を与えられない私に、弟はオーナーさんのお店の唐揚げ弁当をずっと小さいパックに分けて私に食べさせてくれていたんです』
「………あ、」
"私の店にね、大学生っぽい男の子が来るの"
"弁当をいつも二つに分けるんだよね"
"いつも、そのまま持って帰るんじゃなくて唐揚げ二つと白ごはんを半分小さいパックに入れて下さい、って言うの"
「……弟って、」
『オーナーさんの唐揚げが大好きで常連なんです』
「……………」
『私も、大好きなんですけどね？』
そう言って笑った彼女に姉ちゃんが言っていた事を必死に頭を働かせて思い出す。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
