14 Cits ページ16
最初のお客さんから客足が止まらず、チャン君のお姉さんを放置したままの私はひたすら唐揚げを揚げ続けていた。
きっと、お腹も空いているかもしれないのに。何でこんな時に限って沢山来ちゃうかなぁ………
唐揚げ弁当を3つ頼まれて冷蔵庫を開けて鶏肉を見て頭を抱えそうになってしまった。
『あぁぁ、予備が…………』
このまま行けば鶏肉は確実に足りなくなってくる。
…………仕方ない、彼女の初仕事だ。
階段に座り込んでいるお姉さんへ体を向けると少し不安そうに私を見たお姉さんにポケットから取り出した家の鍵を渡した
『私の家に行って鶏肉を取って来て貰えませんか？』
「……へ、」
『ここを西へ進んだ後の十字路を北へ進めばコンビニがあります。そのコンビニの前のマンションの501号室です』
「え、あ、……西？……と、北？」
『はい、行けますか？』
「………あの、西はどっちで、北はどっち……なんでしょうか？」
………そうだ、彼女は学校へ行っていない。勉強してないんだから東西南北も分からないのも頷けてしまう。
どうしよう？お母さんに電話をかける？そんな事を考えていると見覚えのあるスーツ姿の男性が歩いて来てホッと息を吐いてしまった。
…………アンタの姿を見てこんなにも安心する日が来るなんてね、
『スンチョルッ！！』
そう声をかけると笑顔で手を上げたスンチョルに手招きすると小走りして来た私の可愛い弟。
お客さんへ少し待ってください、そう告げてからチャン君のお姉さんの腕を引っ張って立たせるとスンチョルの元へと一緒に向かった
『あ、この子、私の弟のスンチョル』
「え、あ、は、初めまして、」
「え？……あ、あぁ、ども……」
『スンチョル、悪いんだけどこの子と一緒に私の家へ行って鶏肉取って来て』
「は、……はぁ！？」
『頼んだよっ！』
「ちょっ、待っ！……えぇ！？」
そんな声が後ろで聞こえる中キッチンカーの中へと入り作業へと取り掛かった私の視界の端に移ったのは俯いているお姉さんの姿と困ったように立ち尽くしているスンチョルの姿だった
………ごめんね、二人とも。憎むなら鶏肉を憎んでくれ
歩き出した二人の背中に心の中で謝るとまだ列が続いているお客さんを捌いていく為に黙々と唐揚げ弁当を作っていった
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
